導入の背景
業界トップクラスの導入実績を持つ「ほのぼのNEXT」
エヌ・デーソフトウェア株式会社は、山形県で電子精密部品の製造会社として設立された日東電子株式会社から後にソフトウェア事業部門が独立する形で誕生した。「誰もがすこやかに暮らせる社会の実現のために」を経営理念に掲げ、介護や福祉、医療現場における仕事の省力化や円滑化を支える業務支援ソフトウェアで業界をリードしている。
同社が提供する介護・福祉業務支援ソフト「ほのぼのNEXT」は日々のケア記録はもちろん、国の制度に沿った保険請求システムなど、あらゆる角度から現場業務を支援する各種ソリューションが用意されているのが大きな特長だ。
同社では2014年に業界に先駆けて音声を利用して入力業務を支援する仕組みを実現。2018年には現場のコミュニケーションを効率化するツールとして、スマホをインカムとして利用する仕組みの導入に着手した。政府が推進する介護現場におけるICTの利用促進もあり、インカム利用の音声入力・記録についても実証実験が進められている。「生産年齢人口の減少や高齢者増加における業務負担の急増で、業務効率化が必須という時代になってきた。国も電子化推進のため補助金での支援にも力を入れている背景があり導入が進んできたところです」と戦略マーケティング部 シニアマネージャ― 迫田 武志氏は説明する。
導入の経緯
職員同士の円滑な情報共有を目指し、スマホを利用したインカムに着目
同社が展開する介護・福祉業務支援ソフト「ほのぼのNEXT」の中で、職員同士のスムーズなコミュニケーションと円滑な情報共有実現のために開発されたのが、「新デジタルインカムほのぼのTALK++」だ。
「業界内では音声ソリューションと言えばエヌ・デーソフトウェアというイメージが定着してきたところで、次の段階としてスマホを利用したインカムという音声活用を模索していました」と迫田氏は語る。そのタイミングで従来型のインカムを利用しているお客さまに出会い、実際の利用状況を伺うとさまざまな課題に直面していることが分かった。「PHSのほかにインカムのレシーバーやケア記録の入力用端末を持つわずらわしさに加えて、イヤホンケーブルが絡まる、ひっかかって危険、イヤホンで片耳が塞がるため入所者との会話がしにくいといった、さまざまな意見がありました。そのため、このような懸念をうまく解消できる仕組みが望まれていました」と迫田氏。
導入のポイント
スマートフォンを利用したインカムが現場の環境を劇的に変える
デジタル化し、シンプルでスマートな仕組みを導入することは、現場の職員支援のみならず、人手不足を課題とする介護のイメージアップにもつながるのではと大きな期待が寄せられていた。「他のデバイスを持つ必要がなく、スマホのアプリのみで使えるものを望んでいました。また、会話の内容がテキスト化される機能にも、新たな音声の可能性を感じたのです」と迫田氏。他社の音声エンジンも検討したが、ソリューションの1つとして「ほのぼのNEXT」のラインナップに加えるという視点から、Voytの実績を高く評価し、フィールドボイスインカムの採用を決めた。
導入当初はイヤホンマイクを使っていたが、従来型のインカムで問題として上がっていた、耳に装着することへの違和感やケーブルの断線、ピンプラグが折れるなどの問題が多く残っており、他の方式を探すことになった。これら問題の相談を受けたオトモア株式会社が同社と協力し開発した首にかけるネックスピーカーを2020年に採用。これによってフィールドボイスインカムと組み合わせた新たなソリューションへと進化させることに成功した。
「コロナ禍もあり衛生面からイヤホンを一人一組用意することがコスト面で導入のハードルとなっていましたが、ネックスピーカーの場合、除菌シートで拭くことにより共有でき、両手が空いてケーブルもなくなったことで、よりお客さまにご紹介しやすくなりました。」とソリューション事業部 関東第一営業所 営業係 チーフ 大沼 由加氏は当時を振り返る。
導入の効果
介護現場における不安解消や思わぬ副次効果が反響に
現在同社では、フィールドボイスインカムを「ほのぼのTALK++」として自社ブランド化し、数千台規模で全国各地の特別養護老人ホームや介護老人保健施設、民間のデイサービス施設などに広く提供し、なくてはならない現場のコミュニケーション基盤として活用されている。介護業界の業務効率化に向けた政府のICT導入補助金の要件にインカムが含まれたこともあり、多くの事業所で導入が進んだという。
「職員同士のコミュニケーションが取りづらい多層階や広い施設で有効に活用されています。また、ネックスピーカーが防滴・防水仕様(IPX4)のため、水濡れを気にせず浴室での介助にとても便利です。さらに、すぐ相談や連絡ができるため、職員が少ない夜勤の時間帯や新人職員の不安解消のツールにもなるなど、さまざまな場面で役立てられています」と大沼氏。それ以外にも、三密を避けるためインカムを使う朝礼に切り替えた施設や、音声内容が録音されることで職員同士の話しかたが丁寧になるなど、思わぬ副次効果を産んだケースも出てきている。
今回の成功の大きな要因は、Voytとの共創でフィールドボイスインカムを同社で自社ブランド化できたことだったという。また、Voytのサポート体制についても、「何かあればすぐに電話で相談でき、都度レスポンスよく迅速に対応してもらえています。現場の率直な声も伝えやすく、さまざまな支援を受けられて助かっています」と迫田氏は高く評価する。ユーザーはトラブルの原因が何に起因するのか判断がつかず同社に問い合わせをする場合が多い。そんな時でもVoytに相談すれば親身に解決策を考えてくれるなど、技術面での手厚い支援も代えがたいメリットだという。
将来の展望
各種ソリューションとの連携やVoytが持つ技術の活用など新たな可能性を模索
今後については、他のソリューションとの連携など検証を進めているところだ。「現場としては、とにかくスマホ一台にすべてを集約したい、と言われています。介護記録や離床センサー、ナースコール、そして「ほのぼのTALK++」とすべてが一台にまとまっているのが現場の理想です」と大沼氏。ただ、これらを実現するためには、センサー感度の調整や、トラブル発生時の原因切り分けなどさまざまな課題が残っている。それらの課題を検証しつつ、記録された音声データを分析して新たな気づきが得られるようなソリューションや現場にとってより効果的で、課題解決に直結する取り組みを進めていきたいという。「機能を便利にすることだけではなく、現場にとって使いやすいことが一番大切です。そこを常に念頭に置いて今後もよりよいサービスを開発していきたい」と迫田氏は語る。
「ほのぼのTALK++」については、介護現場の負担を軽減するスマートなコミュニケーション機能など多くの要望が寄せられており、フィールドボイスインカムのさらなる機能向上に期待を寄せているという。
他にも、顔認証技術などさまざまな技術の活用についても期待を寄せている。商品企画の立場として、顧客の事業貢献を第一に、ローコストで使いやすいソリューション開発を続けていきたいと迫田氏は意欲的だ。
介護業界における現場のICT化を進め業務効率化を実現することが、結果として職場環境の改善と、利用者の満足度につながるという同社の目標を実現する仕組みづくりのさらなる進化に向けて、今後もVoytは強力に支援していくことだろう。
※この記事の内容は2022年12月に取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
<COMPANY PROFILE>
会社名:エヌ・デーソフトウェア株式会社
代表者:代表取締役社長 丹治 朋之
本社所在地:山形県南陽市和田3369
事業内容:福祉・医療関連オリジナルソフトウェアプロダクトの企画・開発・販売およびソフトウェア運用支援・ソフトウェア保守サービス。自社開発の福祉業務支援ソフトウェア「ほのぼの」シリーズの販売および運用サポ-ト。
URL:https://www.ndsoft.jp/
会社名:オトモア株式会社
事業内容:ヒアリングデバイスの企画・設計・製造・販売とAI/IoT 関連技術を応用したソリューション事業
URL:https://www.otomoa.com/