導入の背景
U-Car事業における新業態立ち上げを実施
神奈川県全域に70店舗(新車:56店舗・U-Car:14店舗)を展開する横浜トヨペット株式会社。”Make the Next Standard.”を企業スローガンに掲げ、トヨタ自動車株式会社が手掛ける新車やU-Carなどを販売するディーラーとして全国屈指の販売台数を誇る。また、幼稚園や保育園への交通安全啓発活動や就業体験の機会創出など、地域社会に貢献する企業づくりを推進。2020年には「かながわSDGsパートナー」に登録され、環境保全など、持続可能な社会実現に向けた活動にも積極的な取り組みを続けている。
そんな同社では、クルマとアウトドアなどの遊び・個性をカタチにする新業態としてU-BASE事業を展開し、2020年には従来のU-Car店舗のイメージを覆すようなショールーム「U-BASE湘南」をオープン。“あなたの個性を刺激する、クルマ遊び基地”をテーマに、トヨタ車をベースとしたカスタムマインドあふれるオンリーワンのU-Carをはじめ、アルファードの専用展示ゾーンやスポーツカーブランドGRを中心としたスポーツゾーン、厳選したキャンプアイテムを紹介・販売する、既存の中古車販売店とは全く違う斬新な店舗づくりが特徴だ。
そのコンセプト通り、U-BASE湘南を訪れるのはアウトドアを楽しむ30~40代層、しかも6割ほどが新規客という新たな客層開拓に成功している店舗の1つだ。
導入の経緯
広い店舗でのスタッフ間のコミュニケーションが課題に
“クルマ遊び基地” を謳うU-BASE湘南は、通常のU-Car店舗に比べてスペースが広い。そのため、営業、事務、エンジニアなど店舗スタッフ間のコミュニケーション環境の整備が不可欠だったと語るのはU-BASE湘南 店長 駒﨑 喜郎氏だ。「広い店舗ながらスタッフの人数は通常店舗と同等なので、オープン前から、スタッフ間の円滑なコミュニケーションのためにインカムは絶対に必要だと考えていました」。
そのため、他店舗で使っているものと同じインカムを調達し、オープン前にテスト運用を行ったところ、電波が届きにくく、2階にいるスタッフとの会話がうまく通じなかったという。「特に事務所から2階の一部エリアに電波が届かず、インカム経由でやり取りできないことが度々ありました。お客さまの来店時に担当者の呼び出しがうまくできない可能性も危惧されていました。お客さまをお待たせすることのないよう、もっとつながりやすい環境づくりが求められたのです」。
導入のポイント
スマートフォンを利用したインカムが現場の環境を劇的に変える
そんな課題を解消すべく新たなインカムの採用を検討していたU-Car事業部 事業推進室 事業推進グループ 小林 豊氏が社内システム担当者から紹介を受けたのが、スマートフォンをインカムの代わりに利用し、東芝の音声認識・音声合成技術を利用した「フィールドボイスインカム」だった。「電話回線を利用する仕組みで、音質や電波環境的には問題なさそうだという印象でした。社内では初めての運用のため、新店舗でぜひ試してみてはと紹介されたのです」と小林氏は経緯を説明する。
これまでも、距離の離れたエリアでも通信できる高性能なインカムを利用した経験を持つ小林氏だが、バッテリーが重く機動性に欠けるなど、従来型のインカムでは広い店舗内での業務には向かないと判断。「電話回線で通信エリアが広いだけでなく、業務用としてスタッフに貸与しているスマートフォンにアプリを入れるだけで使えるため、現場スタッフに新たなデバイスを持たせずに済むという点も魅力でした」と小林氏。
一方で、店舗責任者である駒﨑氏は当初否定的だったという。「インカムがダメならスマートフォンで会話すればいい。インカムに月々のランニングコストがかかるのはあり得ないと思っていました」と駒﨑氏。しかし、試用を始めたところ、使い勝手がよく、もう以前のインカムには戻れないと感じ始めたという。「フィールドボイスインカムでスタッフ同士の会話を耳にしていると、不思議と現場の様子が見えてくる。例えば、お客さまが来店され、受付スタッフが営業スタッフを呼んでも誰も応答しなければ、すぐに私から指示を出したり、私が走って現場に向かうこともできます。慣れてくるとちょっとした会話も耳に入ってきて、スタッフの心理状態なども把握できてくる。これは非常にいいツールだと感じたのです」と駒﨑氏は評価する。
こうしてU-BASE湘南で働くスタッフ同士のコミュニケーション基盤として、フィールドボイスインカムが本採用されることになった。
導入の効果
聞き逃しもなくなり、顧客対応力が格段に向上
現在は、アルバイトも含めた店舗スタッフのほぼ全員がフィールドボイスインカムを利用し、顧客対応の声かけやスタッフ同士の連絡、相談や日常会話も含めたコミュニケーションに活用している。さらに便利なのは店舗外からでもインカムを通して会話ができることだ。
「陸運局や、車庫証明の申請で警察署に行くことが度々あるのですが、外出中でもそのまま店舗同様にスタッフと会話ができます。当初は期待していなかった副次的な使い方として重宝しています」とU-BASE湘南 店舗リーダー 外木 敏志氏は評価する。また、備品を買いに行った時には、スタッフにインカム経由で他に必要な備品がないかを確認でき、以前のように個別に電話で確認したり、何度も足を運ぶことなくなり、現場スタッフからの評価も高い。
またフィールドボイスインカムなら、音声だけでなくチャット形式での文字入力も可能だ。他のスタッフにはその内容が合成された音声で伝わるようになっている。
さらに、会話の内容を録音するだけでなく、音声認識技術によって会話内容が全てテキスト変換、保存されるため、聞き逃しの確認もできる。「お客さまからのお電話に折り返し連絡する場合も、電話番号を声で伝えるだけでテキスト化され、文字で確認できるので、かけ忘れや聞き間違い防止などの効果もあります。また、作業中で聞き漏らしてしまった内容をテキストで後から確認できるなど、コミュニケーションロスやミスの軽減にも大いに役立っています」と駒﨑氏は評価する。
フィールドボイスインカムを導入した最大のメリットは、顧客対応力が格段に向上したことだ。「クルマという高額商品を販売するため、お客さまとしっかりお話しできる時間を確保することがとても重要です。お客さまをお待たせせず、レスポンスよくご満足いただける応対ができるようになったことが何よりの効果です」と駒﨑氏は高く評価する。「オープン時にはスタッフが足りないことを危惧していたのですが、フィールドボイスインカムによってスタッフ同士の連携がスムーズになり、少数のメンバーでもお店をしっかり回せています。1人分の人件費を節約できるほどの働きなのでは」と駒﨑氏。
将来の展望
新たな店舗への展開と蓄積されたデータ活用に期待
今後については、現在予定されている新店舗のオープンに向けて、顧客への対応力を高めるべく、フィールドボイスインカムの導入を検討している段階だ。「新店舗の間口はさほど広くないものの、展示スペースが離れているため、フィールドボイスインカムを活用したいと考えています」と小林氏。新店舗に着任予定の外木氏も「新たな店舗では展示場が別の建屋にあるため、お客さまを案内する際には店舗内スタッフが手薄になってしまうケースも出てきます。フィールドボイスインカムがあれば、少ないスタッフでもチームワークで対応できるでしょう」と期待を寄せている。
従来型のインカムが使われている他の店舗でも、コミュニケーション環境の改善に向けてフィールドボイスインカムの導入を検討していきたいという。特に新車を扱う店舗では車両ナンバー識別システムが導入されているケースが多く、フィールドボイスインカムと連携することで顧客対応力を強化できると見込んでいる。「これまでU-Car事業で活用してきた経験から、非常に優れた仕組みだと自信を持って勧められます。」と小林氏。
顧客応対や業務の円滑な運営に向けたコミュニケーション環境の整備に成功した同社。蓄積された情報をマーケティング戦略に生かすなど、今後もフィールドボイスインカムを有効に活用し、より高い顧客満足度を目指して成果を上げていくことだろう。
※この記事の内容は2021年5月に取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。