公開日:  2025.10.16    更新日:  2025.10.16

チーム医療×多職種連携とは?現場で成果を出すための仕組みとツール活用法

「各職種が個別に動いていて、患者さんの情報が十分共有されていない」「医師の指示待ちになってしまい、他の専門職の意見が活かされていない」「連携はしているつもりだけど、本当に効果的なチーム医療ができているのか不安」そんな悩みを抱える医療・介護現場の方は少なくありません。

 

高齢化が進む日本では、複数の疾患を抱える患者さんが増加し、医療だけでなく介護・福祉サービスを含めた包括的な支援が求められています。一つの職種だけでは対応しきれない複雑なニーズに応えるため、チーム医療と多職種連携の重要性がますます高まっています。

 

この記事では、チーム医療と多職種連携の基本概念から実践方法、成功事例、そして効果的な連携を支援するICTツールまで、現場で成果を出すための具体的な情報をお届けします。記事を最後まで読むことで、チーム医療の本質を理解し、自施設での多職種連携を強化する具体的な方法がわかります。また、連携を円滑にするためのツール活用法や教育・研修のポイントも理解でき、持続可能な連携体制の構築に向けた次のステップを踏み出せるでしょう。

チーム医療とは?多職種連携の定義とその違い

医療現場でよく耳にする「チーム医療」と「多職種連携」という言葉ですが、その違いを正確に理解していますか?混同されがちなこの2つの概念を明確に区別することで、効果的な連携体制の構築につながります。

チーム医療の定義と特徴

チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、診療放射線技師など、医療専門職内での連携体制を指します。一人の患者さんに対して、複数の医療専門職が目的と情報を共有し、それぞれの専門性を最大限に発揮して医療を提供する仕組みです。

従来の医療では、主治医の判断と指示に従って他の職種が業務を行う「医師中心の縦割り構造」が主流でした。しかしチーム医療では、医師を含む各専門職が対等な立場で意見を出し合い、患者さんにとって最良の医療を提供することを目指します。

チーム医療は医療専門職に特化した連携であり、主に病院内での治療・診療が中心となります。医学的な判断と処置に重点を置き、比較的短期間での集中的な連携が特徴です。急性期から回復期にかけての治療過程で、各専門職が密に連携して患者さんの回復を支援します。

多職種連携の定義と特徴

多職種連携は、チーム医療よりも幅広い概念で、医療専門職だけでなく、ケアマネジャー(介護支援専門員)、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、管理栄養士、民生委員など、介護・福祉・社会保障に関わる専門職も含めた連携体制を指します。

一人の患者さんや利用者さんを中心として、医療・介護・福祉・社会保障などの様々な分野の専門職が連携し、生活全体を支援する包括的なアプローチが特徴です。

多職種連携では、医療・介護・福祉の垣根を越えた幅広い連携が行われます。病院から在宅まで様々な場面での連携が必要で、患者さんの生活の質(QOL)向上に重点を置いています。また、長期間にわたる継続的な連携が求められることも大きな特徴といえるでしょう。

2つの関係性と相互補完

チーム医療と多職種連携は対立する概念ではなく、相互に補完し合う関係にあります。多職種連携の中にチーム医療が含まれ、チーム医療で得られた医学的な情報や治療方針が、多職種連携を通じて生活支援や社会復帰支援につながっていきます。

例えば、脳卒中で入院した患者さんの場合。

1.急性期病院でのチーム医療:医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士などが連携して治療・リハビリを実施

2.退院に向けた多職種連携:病院スタッフに加えて、ケアマネジャー、訪問看護師、訪問リハビリスタッフ、福祉用具専門相談員などが参加して在宅復帰を支援

このように段階的で包括的な連携が、患者さんの継続的な回復と生活の質向上を実現します。

地域包括ケアシステムとの関連

日本の高齢化社会に対応するため、国が推進している「地域包括ケアシステム」において、多職種連携は中核的な役割を担っています。住み慣れた地域で最期まで自分らしい暮らしを続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組みの実現には、効果的な多職種連携が不可欠です。

チーム医療の実践例

実際の医療現場では、どのようなチーム医療が行われているのでしょうか。

厚生労働省の「チーム医療の具体的実践例」を参考に、代表的な事例をご紹介します。

栄養サポートチーム(NST)の実践例

チームの構成:

医師(消化器内科、外科など)、管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師

目的と役割分担:

栄養状態が不良な入院患者さんの栄養管理を多職種で行い、治療効果の向上と在院日数の短縮を目指します。

・医師:疾患の診断・治療方針の決定、栄養療法の医学的判断
・管理栄養士:栄養アセスメント、栄養ケア計画の立案・実施
・看護師:患者さんの食事摂取状況の観察、栄養管理の実践
・薬剤師:栄養関連薬剤の管理、薬物と栄養の相互作用の評価
・臨床検査技師:栄養状態の検査データ分析

得られる効果:

・患者さんの栄養状態改善による治療効果の向上
・合併症の減少
・在院日数の短縮
・医療費の削減
・各職種の専門性を活かした質の高い栄養管理

緩和ケアチームの実践例

チームの構成:

緩和ケア医、緩和ケア認定看護師、薬剤師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、理学療法士

目的と役割分担:

がん患者さんとその家族の苦痛の軽減と生活の質の向上を目指します。

・緩和ケア医:痛みや症状のコントロール、治療方針の調整
・緩和ケア認定看護師:患者・家族の心理的サポート、症状観察
・薬剤師:痛み止めなどの薬物療法の最適化
・臨床心理士:精神的なケア、家族カウンセリング
・医療ソーシャルワーカー:社会資源の活用、退院支援
・理学療法士:身体機能の維持・改善、生活動作の支援

得られる効果:

・患者さんの痛みや不快な症状の軽減
・生活の質(QOL)の改善
・家族の介護負担軽減
・在宅療養への円滑な移行
・患者・家族の満足度が高まる

チーム医療を実現する多職種連携を支えるICTツールとは?

効果的なチーム医療・多職種連携を実現するためには、情報共有とコミュニケーションの円滑化が欠かせません。ICTツールの活用により、従来の課題を解決し、より質の高い連携が可能になります。

従来の連携における課題

多職種連携を効果的に進める上で、従来から情報共有の困難さが大きな障壁となっています。職種ごとに異なる記録システムを使用していることが多く、情報が散在して重複入力が発生したり、タイムリーな情報更新が困難になったりしています。また、アクセス権限が複雑で、必要な情報にすぐにアクセスできないという問題もあります。

コミュニケーション面でも様々な課題があります。勤務時間の違いにより連絡を取ることが困難で、緊急時の迅速な連絡体制が整っていない施設も少なくありません。多職種でのカンファレンス調整に時間がかかったり、情報伝達の精度に問題が生じたりすることもあります。

 ICTツールによる課題解決

1.統合型電子カルテシステム

多職種が、同一のプラットフォームで患者情報を共有できるシステムです。

このシステムでは、リアルタイムでの情報更新と共有が可能になり、各職種に適した入力フォームと表示設定を提供しています。過去の履歴や経過を一覧で確認でき、処方や検査結果も自動的に連携されるため、情報の見落としやミスを防ぐことができます。

導入により情報の一元化による連携強化が図れ、重複作業の削減やエラー・ミスの防止にもつながります。また、必要な情報にすぐにアクセスできるため、意思決定の迅速化も実現できます。

2.コミュニケーションツール

医療現場に特化したチャットやメッセージングシステムです。

これらのツールでは、安全な環境でのメッセージ交換が可能で、グループチャット機能により複数の職種で同時に情報共有ができます。緊急度別の通知設定により重要な連絡を見逃すことがなく、ファイルや画像の共有も簡単に行えます。

導入効果として、即座の情報共有と相談ができるようになり、移動中でも連絡を取り合えるため業務効率が向上します。緊急時の迅速な対応体制構築にも役立ち、会話の記録により「言った・言わない」のトラブルも防止できます。

VOYT CONNECT(ボイットコネクト)

医療・介護現場に最適なインカムアプリとして注目されているのがボイットコネクトです。このシステムでは、複数職種での同時通話が可能なリアルタイム音声通話機能を備えており、重要な申し送り内容を音声とテキストで自動保存する機能もあります。多言語対応により外国人スタッフとの連携もスムーズに行え、ハンズフリー対応のため処置中でも安全にコミュニケーションを取ることができます。

3.カンファレンス支援ツール

多職種カンファレンスの効率化を支援するシステムです。

このツールでは、オンライン会議システムとの連携により遠隔地からの参加も可能になり、事前資料の共有と議事録作成が効率化されます。参加者のスケジュール調整が簡単になり、決定事項の自動配信により情報の伝達漏れを防ぐことができます。

導入により、カンファレンス準備時間の短縮と参加率の向上が期待でき、決定事項の確実な伝達と継続的なフォローアップにつながります。

 導入時の注意点

ICTツールを導入する際には、セキュリティ対策が最も重要と言えるでしょう。医療情報の適切な暗号化を行い、アクセス権限を細かく設定することで、情報漏えいのリスクを最小限に抑える必要があります。また、ログ管理と監査機能を整備し、定期的なセキュリティ教育を実施することも欠かせません。

使いやすさの確保も重要なポイントです。直感的なインターフェース設計により、各職種のワークフローに適した機能を提供することで、導入後の定着率を高めることができます。十分な研修期間を確保し、継続的なサポート体制を整備することで、スタッフの不安を解消し、効果的な活用を促進できます。

導入方法については、小規模なパイロット導入から開始し、効果検証と改善を重ねながら段階的に機能を拡張していくアプローチが効果的です。最終的に全職種への展開を図ることで、組織全体での連携強化を実現できます。

チーム医療を強化するための教育・研修の工夫

効果的なチーム医療・多職種連携を実現するためには、技術的なツールの導入だけでなく、人材育成と組織文化の変化が不可欠です。

多職種連携教育(IPE)の重要性

IPEInterprofessional Education)とは 複数の専門職が一緒に学習し、お互いの専門性を理解し合いながら、効果的な連携スキルを身につける教育手法です。

IPEの目的

・各職種の役割と専門性の理解
・コミュニケーションスキルの向上
・チームワークの強化
・患者中心のケア意識の共有

効果的な研修

1.職種理解プログラム

お互いの専門性と役割を深く理解するための研修です。

このプログラムでは、各職種の業務内容と専門技術について詳しく紹介し、職種間の業務の重複と補完関係を確認します。他職種の視点から見た患者像を共有することで、多角的な理解を深め、ロールプレイによる相互理解の促進も行います。これにより、お互いの専門性を尊重し合える関係性を構築できます。

2.コミュニケーションスキル研修

効果的な情報共有とコミュニケーション技術を学ぶ研修です。

研修では、医療現場で広く使われているSBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)法の習得を中心に、アサーティブコミュニケーションの実践方法を学びます。傾聴スキルの向上により相手の意見を正確に理解し、非言語コミュニケーションの重要性も理解することで、より効果的な意思疎通を図ることができるようになります。

3.チームビルディング研修

チームとしての結束力と協働意識を高める研修です。

研修では、チーム目標の設定と共有を行い、役割分担と責任を明確化します。信頼関係構築のためのワークショップを通じて、チームメンバー間の絆を深め、チーム内で発生するコンフリクトの解決方法も学びます。これにより、困難な状況でも結束して対応できるチーム力を育成できます。

 習慣化のために

多職種連携を組織に定着させるためには、継続的な取り組みが必要です。定期的なカンファレンスの実施により、週1回以上の多職種カンファレンスと症例検討会を定期開催し、振り返りと改善点の共有を行います。成功事例の積極的な発信により、他のチームのモチベーション向上にもつながります。

メンター制度の導入も効果的です。経験豊富なスタッフによる指導体制を整備し、新人職員への多職種連携の実践指導を行います。継続的なフィードバックとサポートを提供し、キャリア開発と連動させることで、長期的な人材育成を図ることができます。

評価と表彰制度により、多職種連携の成果を評価する指標を設定し、優秀な連携事例を表彰することでモチベーションを高めます。患者満足度向上への貢献度を評価し、継続的な改善活動を推進することで、組織全体の質向上につなげることができます。

組織文化の醸成では、管理職によるリーダーシップの発揮が重要です。多職種連携を重視する組織方針を明確化し、失敗を学習機会とする風土づくりを進めます。オープンなコミュニケーション環境を整備することで、誰もが意見を言いやすい環境を作ることができます。

 研修効果の測定と改善

研修の効果を適切に評価するためには、定量的指標と定性的指標の両方を活用することが重要です。

定量的な指標として、患者満足度の向上や在院日数の短縮、医療事故・インシデントの減少、スタッフの離職率改善などを測定します。これらの数値は客観的な評価が可能で、研修の直接的な効果を示すものとして活用できます。

定性的な指標では、スタッフの連携満足度やコミュニケーション頻度の増加、相互理解の深化、チーム一体感の向上などを評価します。アンケート調査やインタビューを通じて、スタッフの意識や行動の変化を把握し、研修プログラムの改善点を見つけることができます。

これらの指標を定期的に測定し、研修プログラムの改善につなげることで、継続的な質向上を図ることができます。

まとめ

チーム医療と多職種連携は、高齢化社会における医療・介護の質向上に欠かせない取り組みです。単なる職種間の協力を超えて、患者さん・利用者さんを中心とした包括的なケアの実現を目指すものです。

成功の鍵は、明確なビジョンの共有、効果的なコミュニケーション、継続的な教育・研修、そして適切なICTツールの活用にあります。特にVOYT CONNECTのようなコミュニケーションツールは、従来の連携課題を解決し、より効率的で質の高い連携を実現する強力な支援ツールとなります。

多職種連携は一朝一夕に実現できるものではありませんが、段階的なアプローチと継続的な改善により、必ず成果を得ることができます。患者さん・利用者さんの満足度向上とスタッフの働きがいの両立を目指し、自施設に最適な連携体制の構築に取り組んでいきましょう。

 

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