2024.10.30
PHSサービス終了の実態と病院での継続利用について – 現場管理者が知っておくべき情報
医療・介護施設など、多くの現場で長年活用されてきたPHSですが、PHSサービス終了により、大きな転換期を迎えています。患者やお客様の安全確保、スタッフ間の円滑なコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしてきたPHSの終了は、各施設の運営に大きな影響を与えることが予想されます。本コラムでは、サービス終了の背景から、なぜ一部の医療機関では現在も利用可能なのかまで、現場管理者の方々に知っておいていただきたい情報を詳しくご説明します。
PHSサービス終了の全体像と総務省の方針
PHSサービスは、1995年のサービス開始以降、手軽な通信手段として広く普及しましたが、携帯電話やスマートフォンの台頭により、一般向けサービスとしては徐々に役割を終えることとなりました。NTTドコモは2008年にPHSサービスを終了し、続いてソフトバンクも2020年7月末にPHSサービスを終了しています。
この背景には、総務省による電波の有効利用を目的とした周波数再編の方針があります。総務省は周波数再編アクションプランにおいて、1.9GHz帯の周波数帯の効率的な利用を目指し、新たな通信技術への転換を進める方針を示してきました。特に、第5世代移動通信システム(5G)の普及に向けた周波数確保は重要な課題として位置づけられています。
参照)総務省:周波数再編アクションプラン(令和4年度版)概要
医療機関などの重要施設においては、通信手段の突然の切り替えによる影響を最小限に抑えるため、慎重な対応が求められてきました。各施設では、それぞれの状況に応じて、代替となる通信手段の検討や、新システムへの移行準備が進められています。
特に医療現場では、患者の安全確保やスタッフ間の確実なコミュニケーションの維持が最優先事項となります。そのため、新しい通信システムの選定においては、医療機器への影響や、緊急時の確実な連絡手段としての信頼性など、様々な観点からの検討が必要とされています。
なぜ病院の構内ではPHSが継続利用できているのか
現在も病院の構内でPHSが利用できている理由は、これらが「構内PHS」と呼ばれる独立したシステムだからです。一般の通信事業者が提供していたPHSサービスとは異なり、構内PHSは病院建物内に独自の交換機と基地局を設置し、閉じた通信網として運用されています。
構内PHSは医療現場において特に重要な役割を果たしてきました。まず、医療機器への電磁波の影響が極めて少ないという特徴があります。医療機器の誤作動は患者の生命に関わる重大な問題となりかねないため、この特性は医療現場において非常に重要視されてきました。
また、ナースコールシステムとの連携も構内PHSの重要な特徴です。患者からのナースコールを直接PHSで受信できるシステムは、看護師の業務効率化に大きく貢献してきました。病院特有の複雑な建築構造の中でも、安定した通信が可能という点も、医療現場での信頼性を高めてきた要因です。
さらに、緊急時の確実な連絡手段としても高く評価されています。災害時などの非常事態においても、構内PHSは独立したシステムとして機能し続けることができます。このような特性から、多くの医療機関が構内PHSを継続して使用しているのです。
構内PHSシステムの現状と直面している課題
しかし、構内PHSシステムも深刻な課題に直面しています。最も大きな問題は機器の老朽化です。PHSの生産終了に伴い、端末の修理や交換が極めて困難になってきています。故障した端末の代替確保も限定的となり、予備機の確保も難しい状況です。これにより、システム全体の安定性に不安が生じています。
保守・メンテナンスの面でも課題が山積しています。PHSシステムに精通した専門技術者が年々減少しており、定期点検の実施も困難になってきています。特に緊急時の対応体制が弱体化していることは、医療現場にとって大きな懸念事項となっています。24時間365日の安定運用が求められる医療現場において、この問題は看過できない状況となっています。
部品供給の将来的な見通しも極めて厳しい状況です。製造中止による部品の枯渇は、修理・交換のコストを著しく上昇させています。代替部品の確保も困難になってきており、一度故障が発生すると、修理が不可能になるケースも増えています。このような状況は、医療機関の運営に大きな不安を投げかけています。
今後の展望と代替手段について
PHSサービス終了に伴い、多くの施設では代替手段への移行を検討する必要性に迫られています。現在、主流となっている代替手段には、IP無線やスマートフォンベースのソリューションなどが挙げられます。これらの新しいシステムは、従来のPHSの機能を踏襲しながら、より高度なコミュニケーション機能を提供することが可能です。
それぞれのシステムの特徴や具体的な導入事例、選定方法については、「医療・介護現場のPHSサービス終了後の選択肢」で詳しくご紹介しています。
まとめ
PHSサービスの終了は、多くの現場に大きな変革を迫っています。特に医療・介護施設では、安全性と信頼性を確保しながら、いかに効率的な新システムへ移行するかが重要な課題となっています。ただし、この変革は単なる通信手段の変更にとどまらず、業務プロセスの見直しや改善の機会としても捉えることができます。
新しい通信システムの導入は、確かに大きな投資と労力を必要としますが、同時に業務効率の向上や、より良い患者サービスの提供につながる可能性も秘めています。具体的な代替システムの詳細や、実際の導入事例については「医療・介護現場のPHSサービス終了後の選択肢」をご確認ください。
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