2024.11.20
医療現場で愛されたPHS(ピッチ)の由来と進化 – 次世代通信への転換期を迎えて
医療現場で長年使用されてきたPHS(Personal Handy-phone System)は、多くの医療従事者にとって欠かせないコミュニケーションツールとして親しまれてきました。特に「ピッチ」という愛称で呼ばれ、その小型で使いやすい特徴から、医療現場に深く根付いてきた通信機器です。しかし、サービス終了という大きな転換期を迎え、医療現場は新たな課題に直面しています。本コラムでは、なぜPHSが「ピッチ」と呼ばれるようになったのか、その歴史医療・介護現場のPHSサービス終了後の選択肢から現代の課題まで、医療現場の通信環境の変遷を総合的に解説していきます。
PHSとは?通信サービスとしての特徴と歴史
PHS(Personal(個人の) Handy-phone(ハンディフォン) System(システム)」の頭文字をとった名前)は1995年に、NTTパーソナルとDDIポケットによってサービスが開始された通信システムです。一般の電話回線を利用することで初期コストを抑えられ、近距離のアンテナからの電波受信により、当時の携帯電話よりも安定した通話品質を実現していました。
サービス開始当初は、安定した通話品質と安価な料金設定から若者を中心に人気を集め、「ピッチ」という愛称は流行語となりました。1996年10月には携帯電話との相互通話が可能となり、1997年にはNTTが1通10円でメッセージを送れるサービスを開始するなど、機能面での進化も続けていき、その結果、1997年にはPHS契約件数が700万件を超える最盛期を迎えます。
2000年代に入ると、インターネット接続機能やデジタルカメラ搭載など様々な機能を搭載した機種が登場しましたが、携帯電話の低価格化と機能向上により、一般利用者の契約数は徐々に減少していきました。
医療現場でのPHSの位置づけ
一般利用者の契約数が減少する中でも、医療現場ではPHSの特徴が高く評価され、重要な通信インフラとして定着していきました。医療機器への影響が少なく、建物内での電波の安定性が高いという特徴は、高層階の病院や地下階でも確実な通信を可能にしました。
医療現場での活用は多岐にわたります。患者からのナースコールへの応答、緊急時の医師の呼び出し、他部門との連絡調整など、迅速な医療対応を支える重要なツールとして機能してきました。また、投薬内容の確認や患者の容態変化の報告など、医療安全の面でも重要な役割を果たしてきました。
24時間体制の医療現場において、バッテリーの持続時間が長いという特徴も大きな利点でした。夜勤時でも電池切れの心配が少なく、常に連絡が取れる状態を維持できることは、医療現場において極めて重要な要素となっていました。
このように、PHSは医療現場において単なる通信機器という枠を超えて、医療サービスの質を支える重要なインフラとして発展してきました。特に看護業務においては、患者対応の迅速化、医療安全の向上、業務効率化など、多面的な価値を提供し続けてきたのです。
なぜ"ピッチ"と呼ばれたのか
PHSが若者を中心に普及する中で、「ピッチ」という愛称で親しまれるようになりました。残念ながら、この愛称の正確な由来については、明確な記録が残っていません。一説には「ピーエッチエス」の略称として定着したとも言われておりますが、地域によっては「ピーエイチエス」など様々な呼び方で使用されており、「ピッチ」という呼び方も自然と定着していったと考えられます。
PHS(ピッチ)が抱えていた課題
PHSは医療現場において重要な通信インフラとして活用されてきましたが、現代の医療現場が求める機能面では、いくつかの重要な課題を抱えていました。
最も大きな問題の一つが、「情報の記録と追跡」に関する課題です。音声のみでのコミュニケーションであるため、誰がどのような対応をしたのかの記録が残りません。例えば、ナースコールに対して誰が応答したのかが記録として残らないため、後からの確認や業務の振り返りが困難でした。
この課題は業務効率にも影響を及ぼしていました。口頭での情報伝達を補完するために、別途記録作業が必要となり、本来の医療業務以外の作業に時間を取られることになっていました。例えば、申し送りの際には口頭での伝達内容を改めて文書化する必要があり、この二重作業が残業時間の増加につながっていたのです。
医療現場のデジタル化が進む中、システム連携の面でも限界が見えてきました。電子カルテなどの医療情報システムと連動できないため、情報の一元管理ができず、業務の非効率さにつながっていました。特に、手袋をして作業中や介助中など、画面操作が困難な状況での情報確認や記録に課題がありました。
このような状況の中で、医療現場からは音声通話機能だけでなく、以下のような機能が求められるようになってきました:
通話内容の記録・保存機能
テキストでの情報共有機能
各種医療システムとの連携機能
業務記録の自動化機能
これらの課題は、単なる通話機能の改善だけでは解決できない、より本質的な医療現場のコミュニケーション課題を示していました。そのため、次世代の通信ツールには、これらの課題を包括的に解決できる機能が求められることとなったのです。
次世代通信ツールに求められる要件
このようなPHSの課題を解決するため、次世代の通信ツールは単なる音声通話の代替手段ではなく、医療現場の業務改善を実現する総合的なコミュニケーションプラットフォームとしての機能が求められています。
例えば、弊社が提供するインカムアプリ「フィールドボイスインカム」は、PHSが持っていた「音声での即時コミュニケーション」という利点を活かしながら、現代の医療現場が抱える課題解決に取り組んでいます。音声通話の内容は自動的にテキスト化され、1年間にわたって保存される仕組みとなっています。これにより、「誰が」「いつ」「どのような」対応をしたのかが明確に記録として残り、後からの確認や業務の振り返りが容易になりました。
また、現場での声出しが難しい状況でも、テキスト入力による情報共有が可能です。入力されたテキストは合成音声で伝えられるため、手袋をはめた状態や患者の前でも、必要な情報をスムーズに共有できます。この機能により、現場でのコミュニケーションの選択肢が広がり、状況に応じた最適な情報伝達が可能となりました。
さらに重要な特徴が、外部システムとの連携機能です。例えば、ナースコールシステムと連携することで、従来のPHSでは実現できなかった「誰が対応するか」の可視化や記録が可能となりました。これにより、スタッフ間の無駄な動きが削減され、より効率的な患者対応が実現しています。
PHSが長年培ってきた「使いやすさ」という価値を継承しながら、現代のニーズに応える新しい機能を備えた通信ツールへの移行は、もはや医療現場における必然の流れとなっています。音声通話、テキストメッセージ、システム連携といった機能の統合により、医療従事者の業務効率化と、より質の高い医療サービスの提供が可能となってきているのです。
まとめ:新しい時代の医療コミュニケーションへ
PHS(ピッチ)は長年にわたり医療現場を支え続けてきましたが、テクノロジーの進化とともに、より高度な機能を持つ通信ツールへの移行が進んでいます。新しい通信ツールは、PHSの持っていた使いやすさという長所を継承しながら、現代の医療現場が抱える課題を解決する機能を備えています。
音声通話、テキストメッセージ、システム連携といった機能を統合することで、医療従事者の業務効率化と、より質の高い医療サービスの提供を支援することが可能になっています。PHSサービスの終了は、医療現場のコミュニケーション手段を見直し、より進化した形へと移行していく契機となっているのです。
PHSサービス終了後の具体的な選択肢や、弊社アプリの詳細については、下記ページにて詳しく解説しています。現場の実情に合わせた最適な通信手段の選択に、ぜひ参考にしていただければと思います。