2024.11.21
介護施設におけるインカム導入効果 -2つの施設に見る情報共有の進化とその可能性
介護施設の業務改善において、インカムの導入は大きな効果をもたらしています。スタッフ間のリアルタイムな情報共有を実現し、業務の効率化や待ち時間の削減に貢献するインカム。今回は、厚生労働省が発表している「介護現場における生産性向上の取組事例集」から、熊本県の社会医療法人寿量(じゅりょう)会 通所リハビリテーションセンター清雅苑における情報共有の効率化事例と、奈良県の医療法人鴻池(こうのいけ)会介護老人保健施設鴻池荘 通所リハビリテーションにおける多職種間の情報共有促進の事例をご紹介します。また、これらの実践事例から見えてきた成果と課題を踏まえ、最新のインカムアプリがもたらす新たな可能性についてもお伝えしていきます。
介護現場における情報共有の課題
介護施設では、入浴介助や送迎、リハビリテーションなど、複数の業務が同時進行で行われているため、職員間の円滑な情報共有が欠かせません。しかし、従来の声かけや報告方法では、スタッフが現場を離れて情報を伝えなければならず、それが業務の中断や利用者の待ち時間の発生につながっていました。
今回取り上げる2つの事例においても、こうした課題が具体的な形で表れていました。清雅苑では、入浴介助や送迎対応における情報伝達の遅れが利用者の待ち時間を生み出し、職員の業務効率にも影響を及ぼしていました。また、鴻池荘では、リハビリテーション専門職と介護職員との間での情報共有に時間がかかり、スムーズな連携が困難な状況となっていました。両施設ともに、よりタイムリーで効率的な情報共有の仕組みが求められていたのです。
清雅苑での情報共有の効率化:取り組み
社会医療法人寿量会 通所リハビリテーションセンター清雅苑では、職員間の情報共有の効率化を目指し、インカムの導入を決定しました。導入にあたっては、現場への影響を考慮し、通算6ヶ月という時間をかけて3段階のステップで慎重に進めていきました。
第1ステップ(第1〜3ヶ月目)では、アンケート調査を実施し、現状把握と課題分析を行いました。この調査で、一般職員のケア提供時間の半分以上が入浴業務に費やされていることが判明。また、職員間のコミュニケーションにおける具体的な課題も明確になりました。入浴介助では待機時間や順番待ちの状況把握に課題があり、送迎に関しては、送迎車の到着時刻が現場スタッフに正確に伝わらず、効率的な受け入れ準備ができていないことが課題となっていました。
第2ステップ(第4〜5ヶ月目)では、3ヶ月間のレンタルによる試験運用を開始。入浴業務と送迎の利用者受け入れにおいてインカムを活用し、この期間中、現場の声を積極的に取り入れながら運用ルールを最適化していきました。
そして最終の第3ステップ(第6ヶ月目)では、実際の運用効果を測定しました。このように段階的なアプローチを取ることで、現場の混乱を最小限に抑えながら、確実な導入を実現しています。
清雅苑での情報共有の効率化:実績
導入後の効果は、タイムスタディ調査とアンケート調査の双方で確認されました。タイムスタディ調査では、入浴業務や送迎時の利用者受け入れにおける直接的な時間短縮は大きな数値として表れませんでしたが、職員間の情報共有に費やす時間が1日あたり6.6分削減されました。この時間を利用者への直接的なケアに充てることが可能となり、サービスの質の向上につながっています。
アンケート調査からも顕著な改善効果が確認されました。「情報共有が早くなった」「待ち時間が減少した」と回答した職員が9割以上に上り、特に「現在の利用者受け入れ対応がスムーズになった」と実感している職員が8割以上を占めました。
特に送迎時の利用者受け入れに関しては、大きな変化が見られました。インカム導入前は送迎車がいつ着くのかわからない状態で各職員が準備をしていましたが、インカムの活用により、到着時の事前連絡や情報共有がスムーズになりました。送迎担当者と施設内のスタッフがリアルタイムで連携できるようになったことで、タイムリーな受け入れ準備が可能となり、効率的な対応につながっています。
これらの成果は、6ヶ月という時間をかけた丁寧な導入プロセスと、現場の声を積極的に取り入れながら運用ルールを最適化していった結果といえるでしょう。特に、レンタル期間を設けて試験的に運用を行ったことで、現場の状況に応じて柔軟に調整することができ、高い効果を生み出すことにつながりました。
鴻池荘でのリハビリテーション部門との連携強化:取り組み
医療法人鴻池会 介護老人保健施設鴻池荘では、情報の共有と記録を同時に実施できる体制の整備を目指し、インカムの導入と記録担当者(介護職員)の配置を行いました。導入にあたっては、事前にインカム利用の対象者、利用場所、情報共有・記録すべき情報等の検討を行いました。
当初は浴室とデイルーム間の情報共有が中心でしたが、その後利用シーンを拡大。現場職員から主任クラスの管理職への利用者の欠席連絡や転倒等の突発事象の報告、リハビリテーション専門職間または理学療法士と介護職員の間での入浴時の動作・様子、リハビリテーションの評価結果等の共有、さらにはインカム使用時に気づいた職員の言葉遣いや使用時のルールについての教育・改善など、活用の幅を広げていきました。
鴻池荘でのリハビリテーション部門との連携強化:実績
導入後、事務所全体として、インカムを利用することでケアの現場で必要な情報を必要な職員に伝えられるようになり、多職種間での情報共有が促進され、迅速な対応が可能になりました。例えば、入浴時に内出血等を発見した場合、看護職員等を呼んで利用者の状態を確認し、要因の分析と専門的な対策を迅速に行えるようになりました。
また、食事の時間に、利用者が食堂に向かっている旨を事前に情報共有することで、利用者を待たせることなく配膳することができるようになりました。
さらに、新人職員の育成面でも効果が見られ、インカムの装着を体験した新人職員からは、ケア時の安心感が得られるという感想も聞かれています。
インカム導入がもたらした成果と課題
両施設の事例から、インカム導入による情報共有の効率化が、具体的な業務改善につながることが明らかになりました。清雅苑では情報共有時間の削減と利用者受け入れの円滑化、鴻池荘では多職種間の迅速な連携と専門的な対応の実現など、それぞれの現場に応じた効果が確認されています。
一方で、従来型のインカムには、通信可能な範囲の制限や、共有された情報の記録・保存という面で課題も残されています。これらの課題に対して、現在では新たなソリューションが登場しています。
最新のインカムがもたらす新たな可能性
こうした従来型インカムによる改善効果が実証される中、現在ではさらに進化したスマートフォンアプリ型のインカムソリューションが登場しています。このシステムでは、リアルタイムの音声コミュニケーションに加え、会話内容の自動テキスト化を備えており、後からの振り返りや記録作成の効率化が可能です。
また、インターネットを介した通信により、従来のアナログ無線機では届かなかった距離や階層間でも、シームレスな情報共有が実現。スマートフォンだけでなく、パソコンやタブレットからもアクセスできるため、様々な場面での活用が可能です。
さらに、ナースコールなどの既存システムとの連携機能も備えており、誰がどの通知に対応するのかを明確化し、スタッフの動きの無駄を削減できます。弊社のインカムアプリ「フィールドボイスインカム」は、すでに500施設以上での導入実績があり、解約率1%以下という高い継続率は、その実用性の高さを示しています。
まとめ
このように、インカム導入による業務改善効果は、2つの施設の事例が示す通り、情報共有の即時性向上による業務効率化だけでなく、利用者へのサービス品質向上にも大きく貢献しています。しかし、従来型のインカムでは、情報の記録や保存、遠隔地との連携などに課題が残ります。
これらの課題を解決し、さらなる業務改善を実現するツールとして、スマートフォンアプリ型インカムをご提案させていただきます。音声の自動テキスト化機能や遠隔地との円滑な情報共有など、従来のインカムの利点を活かしながら、より効果的な情報共有を実現できます。すでに500施設以上で導入され、高い評価を得ているこのシステムで、貴施設の業務改善を実現しませんか。
弊社スマートフォンアプリ型インカムの詳細な機能や導入事例については、下記からご確認いただけます。
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また、介護施設における他ツールの業務改善の取り組み事例については、厚生労働省の「介護現場における生産性向上の取組事例集」でご確認いただけます。