2024.11.22
プッシュ トゥ トークの仕組みと実践:スマホアプリでできる新しい業務連絡の形
医療・介護・宿泊施設の現場では、スタッフ間のリアルタイムな情報共有が日々の業務の要となっています。従来の無線機やPHSでは、建物構造による通信の制限や、記録の管理における課題が残ります。また、電話やメッセージアプリでは、複数人での情報共有や緊急時の一斉連絡に限界があります。こうした現場のコミュニケーション課題を解決する手段として、近年注目を集めているのが「プッシュ トゥ トーク(PTT)」という仕組みが採用されたインカムです。本コラムでは、この新しい通信システムの基本的な仕組みから実践的な活用方法まで、現場に携わる方々に向けて解説してまいります。
プッシュ トゥ トークとは:基本の仕組みから活用方法まで
プッシュ トゥ トーク(以下、PTT)は、ボタンを押している間だけ音声を送信できる通信方式です。この方式は従来のトランシーバーやインカムでも広く採用されており、複数人での円滑なコミュニケーションを可能にする基本機能として確立されています。身近な例では、オンラインゲームで味方チームとの戦略共有やコミュニケーションを図る際にも、このPTT方式が活用されています。ゲーム中の素早い情報共有や、必要な時だけ音声を送信できる利便性から、多くのプレイヤーに愛用されています。
携帯電話やLINEなどのメッセージアプリと比較すると、PTTの特徴がより明確になります。通常の電話は1対1の会話に限られ、複数人での同時通話は困難です。LINEなどのメッセージアプリは複数人でのやり取りは可能ですが、文字入力に時間がかかり、緊急時の素早い情報共有には適していません。また、音声通話機能があっても、発言のタイミング調整が難しく、複数人での会話が混乱しがちです。さらに、音声通話を切断していると緊急時の即時連絡ができず、かといって通話を接続したままにすると、周囲の雑音や私的な会話まで共有されてしまうため、業務での使用には適していません。
これに対してPTTは、ボタンを押している人の音声のみが送信される仕組みのため、発言の重複を防ぎ、多人数でもスムーズな会話が可能です。また、ボタンを押すだけで即座に発言できるため、緊急時や手が塞がっている状況でも、素早く確実な情報共有が行えます。必要な時だけ音声を送信できるため、不要な音声が共有されることもありません。
現場でプッシュ トゥ トークを使う:導入から運用まで
医療・介護・宿泊施設など、チームでの連携が不可欠な現場では、確実で効率的なコミュニケーション手段が求められます。現在、現場で活用できるPTTシステムには、これまで長年使用されてきた従来型のトランシーバーやインカムと、近年普及しているスマートフォンアプリ型の2つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解することで、現場に最適なソリューションを選択することができます。
従来型のPTTシステムの最大のメリットは、耐久性の高さと操作の確実性です。専用機器として設計されているため、落下や衝撃に強く、専用ボタンによる確実な操作が可能です。一方で、初期導入コストが高く、機器の追加や更新にも費用がかかります。また、通信可能な距離や建物の構造による制限、通信内容の記録や確認ができないといった課題もあります。
これに対し、スマートフォンアプリ型のPTTは、既存のスマートフォンを活用できることから、導入コストを大幅に抑えられます。さらに、インターネット回線を利用することで、建物の構造や距離に関係なく通信が可能です。また、音声通信の内容を自動で記録・テキスト化できる機能が備わったものもあり、これにより、後からの確認や情報の共有が容易になり、業務の効率化につながります。
ただし、スマートフォン型にも考慮すべき点があります。バッテリー管理が必要なことや、端末の性能によって通信品質に差が出る可能性があります。また、アプリの誤操作を防ぐための適切な設定や、スタッフへの使用方法の周知も重要です。
しかし、これらの課題に対しては、既に効果的な対策が用意されています。例えば、バッテリー消費を最適化する設定や、操作をロックする機能、さらには専用のPTTボタン付きイヤホンマイクの使用により、従来型に劣らない使いやすさを実現できます。
弊社のインカムアプリ「フィールドボイスインカム」の実際の導入事例を見ると、特に医療・介護・宿泊施設では、スマートフォンアプリ型PTTの利点を最大限に活かした運用が進んでいます。例えば、ナースコールやホテルの予約システムとの連携により、通知を自動でPTT通話に変換し、スタッフ間で即座に情報共有できる仕組みを構築している施設も増えています。
プッシュ トゥ トークに最適なイヤホン・マイクの選択
PTTをより効果的に活用するためには、適切なイヤホンとマイクの選択が重要です。医療・介護・宿泊施設の現場では、両手が塞がっている状況が多いため、業務に適した機器の選定が必要です。特に考慮すべきポイントは、装着感、周囲音の聞き取りやすさ、操作性、そして耐久性です。ここでは例として、弊社で扱っている2種類のイヤホンマイクをご紹介します。
有線タイプ:耳掛けイヤホン付きトグルマイク
医療・介護現場で特に高い評価を得ているのが、耳掛けイヤホン付きトグルマイクです。この製品は、耳に優しい素材を使用した片耳掛けタイプのイヤホンを採用しており、長時間の使用でも快適な装着感を実現します。左右どちらの耳にも対応できるため、使用者の好みに合わせて使用可能です。
マイク部分は360度回転するクリップを搭載しており、騒音環境でも口元に近づけることで、クリアな音声通信を実現します。トグルボタン式を採用することで、ワンタッチでのハンズフリー通話を可能にし、高い耐久性も備えています。特に介護施設や病院など、長時間の業務が多い現場での使用に最適です。
■無線タイプ:耳掛けイヤホン+Bluetoothタイピンマイク
より自由な動きを求める現場向けに、耳掛けイヤホンとBluetoothタイピンマイクのセットもご用意しています。このセットの特徴は、イヤースポンジ付きの快適な装着感と、周囲の音を適度に聞き取れる設計の両立です。イヤホンは360度回転するスピーカーを採用しており、左右どちらの耳にも対応可能です。
Bluetoothタイピンマイクは、PTTボタンを搭載しており、スマートフォンを操作することなく即座に通話を開始できます。最大15時間の連続使用が可能で、急速充電にも対応しているため、1.5時間でフル充電が完了します。さらに、360度回転するクリップにより装着が容易で、優れた耐久性も備えています。接客業やサービス業など、移動が多く周囲の状況把握が重要な現場での使用に特に適しています。
実際の導入に際しては、以下のポイントを考慮することをお勧めします。
現場の使用環境(防水・防塵の必要性)や勤務形態(バッテリー持続時間)、業務内容(機動性の重要度)、設備状況(充電環境)など、実際の運用に関わる要素を総合的に判断することが重要です。これらの要素に基づいて最適な機器を選択することで、PTTの利点を最大限に活かし、円滑な業務コミュニケーションを実現できます。
プッシュ トゥ トークの実践的な活用とシステム連携
PTTの真価は、実際の業務フローに組み込んだ時に発揮されます。例えば、あるリハビリ施設では、PTTとナースコールシステムを連携させることで、対応の効率化を実現しています。ナースコールが鳴ると、自動的にPTTを通じて担当スタッフに通知が届き、誰が対応するかをリアルタイムで共有できます。これにより、複数のスタッフが同時に対応しに向かうといった無駄な動きを防ぎ、業務効率の大幅な改善を実現しています。
また、音声のテキスト化機能を活用することで、記録業務の効率化も図れます。例えば、バイタルサインの測定結果や処置の内容を音声で報告すると、自動的にテキストデータとして保存され、後から電子カルテに転記する際の参照資料として活用できます。
特に興味深い活用例として、夜勤帯での活用が挙げられます。人員が限られる夜間において、PTTによる密な情報共有は、スタッフの安心感を高めるとともに、緊急時の迅速な対応を可能にしています。複数階にまたがる見回りも、常に通信が確保されている状態で行えるため、安全性が向上します。
まとめ
ここまで、プッシュ トゥ トーク(PTT)の基本的な仕組みから実践的な活用方法まで、詳しく解説してまいりました。医療・介護、宿泊の現場において、PTTは単なる通信手段以上の価値を提供します。リアルタイムな情報共有による業務効率の向上はもちろん、通信内容の記録による安全性の担保、さらには外部システムとの連携による新たな可能性まで、現場のコミュニケーションを大きく変革する可能性を秘めています。
現場を取り巻く環境は、今後ますます変化していくことでしょう。人手不足や業務の複雑化など、様々な課題に直面する中で、効率的なコミュニケーション手段の確立は、より一層重要性を増していきます。PTTは、そうした課題に対する一つの解決策となり得ます。
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