2024.12.11
トランシーバー・インカムの傍受リスクを知っていますか?現場のコミュニケーションを守る最新手段
医療・介護の現場では、緊急時の対応や日常的なケアの質を左右する重要な要素として、スタッフ間のコミュニケーションがあります。しかし、従来から使用されているトランシーバーやインカムには、意外と知られていない情報セキュリティ上の課題が存在します。本コラムでは、現場の通信手段が抱えるリスクと、最新のソリューションについて詳しく解説していきます。
現場のコミュニケーションツールが抱える"見えない"リスク
無線通信の基本的な仕組みは、PTTボタン(Push To Talk)を押すことで特定の周波数帯を使って音声を送信するというシンプルなものです。この仕組みは操作が簡単で直感的なため、多くの現場で活用されていますが、セキュリティ面では重大な脆弱性を抱えています。
傍受について考える中で、一点注意が必要なのは「傍受」と「盗聴」の違いです。実は、第三者が無線通信を受信して聞くこと自体は、日本の電波法上では違法とされていません。これは、災害時の情報収集など、公共の利益につながるケースを考慮しているためです。しかし、傍受した情報を第三者に漏洩したり、不正に利用したりする「盗聴」は重大な犯罪となります。
医療・介護現場での会話には、患者様の症状や処置内容、個人情報など、プライバシーに関わる重要な情報が含まれています。「3階の山田様の血圧が急上昇」「202号室の佐藤様の介助」といった日常的な業務連絡でさえ、外部に漏れれば大きな問題となりかねません。
無線機の種類別セキュリティ特性を知る
現在使用されている無線機は、そのセキュリティレベルによって大きく二つに分類できます。
【リスクの高い従来型無線機】
アナログ簡易無線機は、音声をそのまま電波に乗せて送信するため、周波数さえ特定されれば容易に傍受が可能です。また、近接する周波数帯で強い電波が発信されていると混信が起きやすく、緊急時の連絡に支障をきたす可能性があります。さらに重要な点として、2024年12月からはアナログ方式の使用が制限されるため、早急な対応が必要です。
特定小電力トランシーバーは、422.2MHz~422.3MHzなどの決められた周波数帯を使用します。この周波数帯は免許不要で使用できる利点がある反面、同じ周波数に合わせれば、メーカーが異なっても通信内容を傍受できてしまいます。例えば、病院の近くでイベント会社が同じ周波数帯のトランシーバーを使用していれば、互いの通信が混信したり、内容が傍受されたりするリスクがあります。
【セキュリティ重視の現代型無線機】
デジタル簡易無線機は、音声をデジタル信号に変換して送信することで、傍受のリスクを大幅に低減します。特に、秘話モード機能を活用することで、高いレベルのセキュリティを確保できます。
最も進化したIP無線機であれば、携帯電話各社のIPネットワークを利用し、音声を暗号化してデータとして送信します。各機器に割り当てられたIPアドレスによって通信を行うため、従来型の無線機で問題となっていた傍受や混信のリスクをほぼ完全に解消できます。
効果的な傍受対策の実践
通信セキュリティを確保するための対策は、使用する機器によって異なるアプローチが求められます。現在、多くの医療・介護施設で使用されているアナログ無線機では、完全な傍受防止は困難ですが、運用面での工夫により一定のリスク軽減が可能です。例えば、重要な情報を含む通信は必要最小限に抑え、可能な限り対面での伝達を組み合わせることで、情報漏洩のリスクを低減できます。また、通信時は周囲の状況に注意を払い、近くに部外者がいないことを確認するといった基本的な注意も重要です。
デジタル簡易無線機を導入している場合は、秘話モードの活用が最も効果的な対策となります。5桁の秘話コードと3桁のユーザーコードを組み合わせることで、通信の安全性を大幅に高めることができます。例えば、病棟ごとに異なるコードを設定することで、各部門の通信を適切に分離。緊急時には全体共通のコードに切り替えるなど、状況に応じた柔軟な運用が可能です。
より高度なセキュリティを求める場合、IP無線機の導入も有効な選択肢です。IPネットワークを介した暗号化通信により、各端末に割り当てられた固有のIPアドレスによる認証と、データの暗号化が実現します。また、通信範囲がネットワークでカバーされるエリア全体に及ぶため、建物の構造に左右されにくいという実用面での利点も見逃せません。
どの機器を選択する場合でも、セキュリティ設定の定期的な見直しやアクセス権限の適切な管理は欠かせません。また、スタッフへの運用ルールの周知徹底や、緊急時の対応手順の確立も重要です。万が一の情報漏洩に備えて、対応プランを事前に整備しておくことも、リスク管理の観点から推奨されます。
このように、各機器の特性を理解し、技術的な対策と運用面での対策を適切に組み合わせることで、より安全な通信環境を構築することができます。特に医療・介護現場では、患者様の個人情報を扱う特性上、より慎重な対応が求められます。日々の業務効率を維持しながら、どのようにセキュリティを確保していくか、現場の実情に合わせて検討を進めることが重要です。
次世代コミュニケーションツールの選択
スマートフォンを活用したインカムアプリは、通信方式自体が従来の無線機とは大きく異なります。データ通信やWi-Fiネットワークを利用して音声を暗号化して送信するため、従来型の無線機で懸念されていた傍受のリスクをほぼ完全に排除することができます。この技術革新により、医療・介護現場での機密性の高い会話も、安心して行えるようになりました。
さらに、このインカムアプリの特徴は、セキュリティの確保だけにとどまりません。音声とテキストを統合した効率的な情報共有により、現場のコミュニケーションを大きく改善します。
例えば、当社インカムアプリ「フィールドボイスインカム」は、ナースコールとの連携機能を備えており、「3階ナースステーション前のナースコールに山田看護師が対応します」といった情報が自動的に記録・共有できます。これにより、誰がどの要請に対応しているのかが一目瞭然となり、チーム全体の業務効率が向上します。
また、会話内容はチャット形式で後から振り返ることができるため、申し送りやインシデント検証にも活用できます。音声のテキスト化機能により、休憩後でもすぐに現場の状況を把握することも可能です。
まとめ
医療・介護現場での通信システムの選択において、最も重要なのは「セキュリティ」と「使いやすさ」のバランスです。現状の課題を正確に把握し、将来的な拡張性も考慮しながら、最適なソリューションを選択する必要があります。
特に以下のポイントに注目して検討を進めることをお勧めします:
2024年のアナログ方式使用制限への対応
患者様の個人情報保護の強化
スタッフの業務効率向上
システム連携による将来的な発展性
デジタル技術の進歩により、より安全で効率的なコミュニケーション環境の構築が可能となっています。現場の声に耳を傾けながら、段階的な導入を進めることで、より質の高い医療・介護サービスの提供につなげていくことができるでしょう。
私たちは、現場の課題に寄り添いながら、最適なコミュニケーションツールのご提案と、充実したサポート体制の提供を心がけています。ぜひ、貴施設に最適な通信環境の構築についてご相談ください。