2024.12.12

スマホ無線アプリ導入ガイド – 医療・介護施設が知っておくべきポイント

医療・介護の現場では、スタッフ間の確実な情報共有が、より良いケアの実現に直結します。その上でスタッフ同士の連携を強めていくために、従来のPHSや無線機に代わり、スマートフォンを活用した無線アプリが新たな選択肢として注目を集めています。本コラムでは、医療・介護施設の管理者の方々に向けて、その導入・運用のポイントを詳しく解説していきます。

医療・介護現場における無線アプリとは

スマートフォン向け無線アプリは、医療・介護現場のコミュニケーションに革新をもたらす新しい通信システムです。一般的なLINEや電話アプリとの大きな違いは、Push-to-Talk(PTT)機能を採用している点です。画面上のボタンを押す、もしくは、無線アプリと接続しているイヤホンのマイクを押すだけで即座に通話が開始でき、複数の相手と同時に会話できるため、現場での緊急対応や素早い情報共有に適しています。

医療・介護の現場では、患者さんのバイタルチェックやケア中でも、急な指示や相談に対応する必要があります。従来のPHSや携帯電話では、着信応答のために作業を中断したり、両手が塞がっている際に電話に出られないといった課題がありました。無線アプリならPTTボタンを押すだけで即座に通話が可能なため、処置中でも最小限の動作で連絡を取ることができます。また、ナースステーションにいるスタッフも、居室でケアを行うスタッフの要請にすぐに応えることができます。

従来の無線システムにはさまざまな種類がありますが、スマートフォン向け無線アプリの特徴は、既存のモバイルデータ通信網を活用している点にあります。これにより、専用機器の導入なしでも、建物内のどこからでも高品質な音声通話が可能となります。この特長は、夜勤帯など限られたスタッフで広いフロアをカバーする必要がある医療・介護現場で特に重要です。

導入に関しては、まず業務用スマートフォンの選定から始める必要があります。多くの医療・介護施設では業務用スマートフォンの導入がまだ進んでいない現状がありますが、将来的なDX推進を見据えた場合、電子カルテの閲覧や記録入力、ナースコールシステムとの連携など、コミュニケーションツール以外の用途でも活用できる基盤となります。

このように、医療・介護現場特有の課題に対応した機能と、将来的な拡張性を備えた無線アプリは、現場のコミュニケーション改革において重要な役割を果たすツールとなっています。

無線アプリ導入のメリットとデメリット

ここまで無線アプリの基本的な特徴をご紹介してきましたが、実際の導入を検討するにあたっては、そのメリットとデメリットを詳しく理解しておく必要があります。医療・介護現場という特殊な環境において、どのような効果が期待でき、また、どのような課題に備えるべきなのか、具体的に見ていきましょう。

まず、最も大きなメリットは業務効率の飛躍的な向上です。従来の電話やPHSでは、相手の応答を待ったり、個別に連絡を取ったりする必要がありましたが、PTT機能により、必要な時に必要なスタッフとすぐにコミュニケーションが取れるようになります。例えば、患者さんの急変時には、PTTボタンを押すだけで複数のスタッフに同時に支援を要請でき、対応の遅れを最小限に抑えることができます。

また、通話内容の自動テキスト化機能も画期的です。夜勤帯での重要な申し送り事項や、緊急時の対応記録が自動的に保存されるため、情報の確実な伝達と振り返りが可能になります。これは、インシデント防止やケアの質向上にも直接的に貢献します。

一方で、新しいシステムならではの課題もあります。最も注意が必要なのはバッテリー管理です。通常のスマートフォン利用以上に電力を消費するため、予備バッテリーの確保や充電ルールの策定が欠かせません。特に長時間の夜勤では、充電切れによるコミュニケーション途絶を防ぐための運用ルール作りが重要になります。

また、通信環境の安定性も重要な検討ポイントです。モバイルデータ通信を利用することで、施設内のどこでも安定した通話が可能になりますが、通信費用の管理や、圏外エリアが生じないよう、事前の通信環境調査が必要です。(施設内のWi-Fi環境も利用可能ですが、フロア間の移動時の切断リスクを考慮し、多くの場合はモバイルデータ通信の利用を推奨しています。)

さらに、システムトラブル発生時の代替手段の確保も忘れてはいけません。特に夜間や休日の対応について、明確なバックアップ体制を整えておくことが重要です。

医療・介護特化型インカムアプリの特長

医療・介護現場向けに開発を進めている当社のインカムアプリ「フィールドボイスインカム」には、現場のニーズに応える独自の機能が実装されています。その代表的な特長が、ナースコールシステムとの連携機能です。従来のナースコール運用では、誰が対応するのかの確認に時間がかかり、複数のスタッフが同じコールに向かうなど、人員配置の非効率が課題でした。インカムアプリとナースコールを連携させることで、誰がどのコールに対応するかをリアルタイムで共有でき、より効率的な人員配置が可能になります。

マルチデバイス対応も現場の業務効率を高める重要な機能です。スマートフォンだけでなく、タブレットやパソコンからもシステムにアクセスできるため、スタッフステーションでの情報確認や、管理者による運用状況の把握も容易になります。これにより、現場のスタッフと管理者との間でもスムーズな情報共有が実現します。

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医療・介護現場に適した無線アプリの選び方

無線アプリの導入を成功に導くためには、音声品質という基本的な要素から考える必要があります。コミュニケーションツールとして最も重要な音声品質は、実は使用する端末の性能とヘッドセットの選択に大きく左右されます。医療・介護の現場では、清潔な手袋を着用しながらの作業や、両手がふさがった状態での通話が日常的に発生するため、これらの機器選定は慎重に行う必要があります。

また、多くの医療・介護施設では、そもそもスマートフォン環境自体が整っていないのが現状です。個別に端末を選定し、通信回線を契約し、さらにアプリを導入するとなると、かなりの手間とコストがかかってしまいます。そこで当社では、導入のハードルを下げる「まとめてプラン」をご用意しています。このプランは、インカムアプリのライセンス、業務用スマートフォン本体、データ通信用SIM、そして端末管理システムまでをワンパッケージにしたものです。

特に端末管理システムの重要性は見過ごしてはなりません。たとえば、スマートフォンの紛失時には患者情報の漏洩リスクが発生します。端末管理システムがあれば、遠隔でのデータ消去や位置情報の確認が可能です。また、アプリの一括インストールや設定変更も容易になり、運用管理の手間を大幅に削減できます。さらに、利用状況の把握や不適切な使用の防止など、セキュリティ面でも重要な役割を果たします。

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成功する導入・運用のステップ

無線アプリの導入を成功に導くためには、計画的なアプローチが重要です。まず、施設内のWi-Fi環境の整備状況を確認し、必要に応じて通信インフラの増強を検討します。特に、エレベーターホールや階段室など、電波が届きにくい場所への対策は入念に行う必要があります。

スタッフへの説明と教育も成功の鍵を握ります。特に、これまで無線機やPHSを使用してきたベテランスタッフに対しては、新システムのメリットを具体的に説明し、理解を得ることが重要です。たとえば、「これまで聞き逃した申し送り内容を確認するために人に聞き返す必要がなくなる」「緊急時の対応履歴が自動的に記録される」といった、実務に即した説明が効果的です。

運用ルールの設定では、現場の実態に即した具体的な指針が必要です。緊急度に応じた連絡方法の使い分け(音声・テキスト)、勤務交代時の機器の受け渡し手順、充電ルールなど、細かな運用ルールを事前に定めておくことで、導入後のトラブルを最小限に抑えることができます。また、システムトラブル時の対応手順も明確にしておく必要があります。特に、夜間や休日の緊急時対応について、代替手段の確保やサポート窓口との連絡方法など、具体的な手順を定めておくことが重要です。

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まとめ

医療・介護現場における無線アプリの導入は、単なる通信手段の変更以上の価値をもたらします。音声とテキストを組み合わせた確実な情報共有、記録の自動化による業務効率の向上、そして何より、スタッフ一人一人の負担軽減につながる可能性を秘めています。

導入に際しては、現場のニーズを十分に把握し、適切な製品選定と計画的な導入プロセスを経ることで、より効果的な活用が可能になります。医療・介護の現場で働くスタッフの皆様の力になれる、そんなツールとして無線アプリを活用していただければ幸いです。

より詳しい情報や導入に関するご相談は、お気軽に弊社専門スタッフまでお問い合わせください。無料トライアルも実施しておりますので、実際の使用感を体験いただくことも可能です。現場の課題に応じた最適なソリューションをご提案させていただきます。

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