公開日:  2025.04.22    更新日:  2025.04.22

MCA無線サービス終了の背景と最新インカムアプリへの移行ガイド

MCA無線は長年、多くの業界で災害に強い業務用通信手段として活用されてきましたが、2029年を持ってサービスが終了になることが発表されました。本コラムでは、MCA無線の概要から終了に至る背景、そして最新の代替手段であるスマートフォンで利用できるインカムアプリについて移行手順を詳しく解説していきます。

MCA無線とは:災害に強い業務用通信システム

一般財団法人移動無線センター(Mobile Radio Center, Inc. 以下、MRC)が提供するMCA無線は、1982年(昭和57年)のサービス開始以来、40年以上にわたり様々な業界の業務効率化、安心の確保に貢献してきました。

MCA無線の大きな特徴は、過去に発生した「阪神淡路大震災」「東日本大震災」「北海道胆振東部地震」「令和2年7月豪雨」などの大規模災害時においても、携帯電話や固定電話が通信集中(輻輳(ふくそう))により繋がりにくくなる中、止まることなくサービスを継続してきた点です。この信頼性から、国の機関や地方自治体の防災・危機管理用通信として、また物流、ガス、水道、清掃、医療、警備等の様々な分野で広く活用されていました。

MRCが提供するMCA無線には、以下の2つのサービスがあります:

・mcAccess e(エムシーアクセス イー):800MHz帯の電波を使用し、複数の通信チャネルを多数の利用者が共同利用するシステム。中継局は耐震性に優れた高層ビルや山頂に建設されており、広いサービスエリアが確保されています。

・MCAアドバンス:2021年4月から提供開始された、国際的に標準化されたLTE技術を適用した新しいサービス。カメラ、GPS等を装備したスマートフォンタイプの端末によるリアルタイム映像配信やチャット機能などが特徴です。

【MCA無線が災害に強い理由】
MCA無線は以下の理由から特に災害時に強い通信手段として知られています:

耐震性に優れた中継局設備:全国117箇所の中継局は、1981年以降の新耐震基準に基づき設計・建設され、法令に基づいた耐震診断も実施されています。

非常用発電装置:停電時でも安定した無線通信サービスを提供するため、各中継局には非常用発電装置が設置されており、定期的な点検も行われています。

輻輳対策:複数のチャンネル(周波数)から自動的に空きチャンネルを選択して接続する通信方式を採用し、災害時でもつながりやすい状態を維持します。

万全の監視体制:MRCの監視センター(東京都新宿区)では、24時間365日休むことなく有人による監視業務を実施。万が一、首都圏で大規模な震災等が発生した場合でも、大阪府の監視センターに監視システムの統制機能が切り替わる仕組みが整っています。

出展先:一般財団法人移動無線センター

MCA無線サービス終了に至った背景

このように高い信頼性を誇るMCA無線ですが、以下の理由からサービス終了が決定されました。

利用者減少と経済的要因

MCA無線の契約数はピーク時と比べ約8割減少し、2023年時点で約63万件から13万件あまりへと激減しています。携帯電話やスマートフォンによる通信手段が普及したことで専用無線を使い続けるメリットが薄れ、また、IP無線や他のデジタル無線へのシフトが進み、多くの企業が撤退したと考えられます。そして基地局側としては、収入が大幅に縮小した結果、移動無線センター(MRC)の事業収益は圧迫され、中継局設備の維持や更新に必要な投資が困難になりました。

出展先:テレネット株式会社

技術的陳腐化

主力の800MHz帯デジタルMCAシステムは2003年10月のサービス開始以来20年が経過し、端末の製造供給もすでに停止しています。故障時の保守部品確保も困難となり、安定運用に支障が出始めていました。最新の通信ニーズに応えられず、音声のみでデータ通信機能が限定的な従来MCAは、画像や映像も扱いたい利用者の要求にそぐわなくなっていました。

【サービス終了のスケジュール】
MCA無線のサービス終了は以下のスケジュールで進行します:

MCAアドバンス:2027年3月31日をもって終了
800MHz帯デジタルMCAサービス(mcAccess e):2029年5月31日をもって終了

移動無線センターは2023年5月31日をもって新規申込受付を原則終了しており、デジタルMCAについては終了まで約5年の移行期間を設けています。

出展先:一般財団法人移動無線センター

MCA無線に代わる最新の代替技術

MCA無線サービスの終了に伴い、ユーザーは代替手段への移行を検討する必要があります。現在、いくつかの有力な代替技術が存在しており、それぞれ特徴が異なります。

IP無線(広域IPトランシーバー)

IP無線は携帯電話網やインターネット網を利用した業務用無線機です。各携帯キャリアの通信インフラ上でサーバを介して音声をパケット伝送する仕組みで、通信距離に制限なく日本全国で利用可能です。専用のハンディ機や車載機を用い、プッシュトークで同報通話できる点は従来無線と同じですが、実体はIP通信のため混信やノイズがなくクリアな音質を実現します。

免許や無線資格は不要で、端末を購入し回線契約すればすぐ使える手軽さも大きな利点です。また従来の無線より同時通話や複数グループ通信が柔軟で、事務所と現場、現場同士など一斉・個別通話をソフトウェア的に実現できます。

デメリットはキャリア網に依存するため、携帯電話が輻輳・障害で使えない状況では同様に使えなくなる点です。また山間部・地下など携帯圏外では通話できず、中継局が独自に整備されていたMCAとは異なり通信エリアは携帯網頼みとなります。

衛星通信無線
地上通信インフラに依存しない衛星携帯電話や衛星通信トランシーバーも重要な代替手段です。災害時に携帯・無線が全滅した場合でも、衛星さえ見通せれば通信できるため、究極のバックアップとして期待されます。

衛星通信の長所は、日本全域(さらには全世界)をカバーし山間離島でも確実に通信できることです。短所は通信コストの高さとわずかな音声遅延です。端末価格も高額で、利用料も月額基本料に加え通話課金が発生するものが一般的です。そのため、多くの場合、日常業務用ではなく緊急時のバックアップとして位置づけられています。

インカムアプリ:次世代の業務用通信ソリューション

MCA無線に代わる新たな選択肢として、注目を集めているのがスマートフォンやタブレットを活用したインカムアプリです。これは特定の無線専用機を使わず、汎用のスマートデバイスにアプリをインストールして業務用無線のように使う方法です。

インカムアプリは、IP無線と同様にインターネット通信を利用しているため、日本全国どこでも携帯電話の電波が届く場所であればシームレスにつながります。エリア制限がなく、地域をまたいだ広域通信や全国規模の通信も可能です。IP無線の広域性というメリットをそのまま継承しながら、専用端末を必要としないという利便性を兼ね備えています。

インカムアプリの基本機能は、従来のインカムのようなプッシュトーク方式の音声通信です。部門やチーム単位でグループを作成し、メンバー全員に一斉に音声を届けることができる他、特定のメンバーとのみ通話することも可能です。

インカムアプリの大きな特徴として、AIを活用したリアルタイム文字起こし機能があります。通話内容が自動的にテキスト化され、アプリ内に記録されるため、後から内容を確認したり検索したりすることが可能です。

音声だけでなく、画像を共有できるマルチメディア機能も魅力です。現場の状況を視覚的に共有するための画像共有、騒音環境などで音声が使いにくい場合のバックアップとして活用できるテキストチャット機能などが統合されています。

インカムアプリの導入には多くのメリットがあります。まず、専用機器が不要で既存のスマートフォンやタブレットで利用できるため、大幅な初期投資削減が可能です。無線局免許や更新手続きも不要なため、維持コストも低減されます。また、利用人数に応じた柔軟な料金プランにより、必要な分だけ契約することができます。

将来性の面では、クラウドベースのため常に最新機能が利用可能であり、業界や企業固有のニーズに合わせた機能拡張も可能です。AI、IoT、AR/VRなど新技術との連携も随時追加されるなど、長期的な進化が期待できます。

インカムアプリへの移行手順

MCA無線のサービス終了に向けて、単に代替手段を選ぶだけでなく、この機会に通信環境全体を見直すことをお勧めします。インカムアプリを中心とした戦略としては、まず試験導入フェーズとして一部部署や特定チームでアプリを試験的に導入し、次にMCA無線とインカムアプリを並行利用する併用フェーズを経て、最終的に全社的にインカムアプリへ移行し業務フローも最適化する完全移行フェーズへと段階的に進めることが効果的です。

特に弊社のインカムアプリは導入の敷居が低く、お持ちのスマートフォンを活用することもできるため、試験導入から実運用までのハードルが非常に低いのが特徴です。MCA無線のような専門知識や複雑な手続きは不要で、ITに詳しくないスタッフでも簡単に操作できるよう設計されています。

通信の信頼性を確保するため、日常業務ではインカムアプリを主力通信手段として活用しながら、災害対策として重要拠点には衛星電話や特殊IP無線を配備し多重化を図り、複数の通信事業者回線を活用して単一障害点をなくすハイブリッド通信戦略も検討できます。

さらに、インカムアプリの導入を契機に、紙の報告書から電子記録への移行、場所を選ばない柔軟な業務体制の構築といったデジタルトランスフォーメーションも推進することで、より大きな効果が期待できます。

インカムアプリの導入をサポートする5つのステップ

弊社のインカムアプリは、MCA無線からの移行をスムーズに進めるための導入プロセスをシンプル化しています。専用機器が不要で無線免許申請も必要ないため、下記のステップで迅速に導入が可能です。

ステップ1:お問い合わせ・ご相談
まずは、お問い合わせフォームからご検討中の内容をお聞かせください。具体的なご要望やお困りの点を詳しくお知らせいただけると、より適切なご提案が可能となります。お送りいただいた情報をもとに、営業担当者がメールにてご連絡を差し上げます。

ステップ2:ご要望のヒアリング
お打合せにて、お客様のご要望や課題・目的など、ヒアリングいたします。お打合せは、ご訪問での対面打合せだけではなく、Web会議でのオンライン打合せも実施可能ですので、ご相談ください。

ステップ3:お見積書提出・確認
お打ち合わせの内容をもとに、詳細なお見積書を作成いたします。ご要望や条件をしっかりと反映させた内容で、スムーズなプロジェクト進行をサポートいたします。不明点や追加のご相談があれば、随時対応いたしますので、お気軽にご連絡ください。

ステップ4:トライアル導入
ご提案内容にご興味を持っていただいた場合、実際の機器を現場で試用していただくトライアル導入を行います。この期間中に、業務効率の改善や導入効果を実感していただけるよう、弊社スタッフがサポートいたします。トライアルの結果をもとに、さらに具体的な調整を行います。

ステップ5:ご発注
トライアル導入の結果とお見積内容にご納得いただけましたら、ご発注の手続きを進めさせていただきます。ご発注に際しては、正式なご依頼書をいただきます。弊社では、迅速かつ正確な対応を心がけておりますので、ご不明点があれば随時お問い合わせください。

MCA無線のように専用機器の調達や無線局免許申請、無線従事者の確保といった複雑な手続きは一切不要です。お持ちのスマートフォンですぐに始められるため、移行の障壁を大幅に低減できます。

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まとめ

MCA無線サービスの終了は、長年愛用されてきた信頼性の高い通信手段の喪失という側面がある一方で、より高機能で柔軟な次世代通信への移行チャンスでもあります。特にインカムアプリは、文字起こし機能や画像共有機能など、MCA無線では実現できなかった多彩な機能を提供し、業務効率化と安全性向上に大きく貢献します。

移行期間中はまだMCA無線が利用可能ですが、早めに代替手段の検討と導入を進めることで、円滑な移行と将来を見据えた通信環境の構築が可能になります。インカムアプリは単なる通話ツールではなく、業務全体のデジタル化を促進するプラットフォームとして、これからのビジネスを強力に支援するでしょう。

お客様のビジネスに最適な通信環境の構築について、詳しいご相談や無料トライアル、お見積のご要望は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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