PHSサービス終了による医療現場への影響

2023年3月をもって公衆PHSサービスが終了しました。1990年代に一大ブームとなったPHSは「小型・軽量・安価」の三拍子そろった通信機として、医療現場でも広く活用されてきました。しかし携帯電話の普及とともに徐々に影を潜め、ついにその役目を終えることとなりました。

現在でも構内PHSは使用できますが、新たな課題が浮きぼりになっています。PHSの基地局は1台に対して3台前後しか子機を使用できず、スタッフ数の増加や通信エリア拡大時には設備の増設が必要です。さらに、PHS終了を受けて販売店の供給が不安定になり、故障時の修理も困難になりつつあります。

コミュニケーションの課題

病院内では、医師・看護師・事務スタッフなど多職種が連携して業務を行っています。患者の安全を守るためには、迅速で正確な情報共有が不可欠です。

従来の内線電話では「スタッフの所在確認に時間がかかる」「緊急時に複数人への同時連絡ができない」「移動しながらの通話ができない」といった課題がありました。特に広い病院内では、スタッフを探すだけで時間を要することもあり、年間で考えると相当な時間ロスが発生しています。

安全性と緊急性の両立

医療現場では、患者の命に関わる緊急事態が日常的に発生します。入浴介助中の患者の体調急変、手術室での急な指示伝達、夜間の緊急対応など「手が離せない」「その場を離れられない」状況での連絡手段が求められます。

またペースメーカーをはじめとする医療機器への電波干渉を避けながら、複数人での同時通話が可能な通信手段が必要です。

病院向けインカムにはいくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解し、環境や用途に応じた選択が重要です。

導入時のチェックポイント

▪️病院の規模とフロア構成

小規模のクリニックでは特定小電力トランシーバーでも十分ですが、多階層の大型病院ではIP無線機やWi-Fi対応システムの方がより適していると言えるでしょう。各フロア間での確実な通信を確保するため、事前の電波調査が重要です。

▪️ネットワーク環境

Wi-Fi対応インカムを導入する場合、既存のネットワーク環境で十分な帯域幅と安定性が確保できているかを確認する必要があります。必要に応じてネットワークの増強も検討しましょう。

▪️使用者数と運用形態

同時に接続できる人数や、グループ分け機能の有無などの考慮が必要です。夜勤体制での長時間使用を想定し、バッテリー持続時間も選択基準となります。

▪️医療機器との電波干渉

3G/4G/5G回線を利用したIP無線機などを使用し、ペースメーカーや人工呼吸器などの生命維持に関わる医療機器への影響を最小限に抑える必要があります。

病院でのインカム導入事例

実際の導入事例をご紹介します。導入効果や使用感を通じて活用イメージを描いていただければと思います。

富士いきいき病院様の導入事例

197床を有する「富士いきいき病院」では、スタッフ間におけるコミュニケーション不足の課題を解決するため、スマートフォンを活用したインカムアプリ「VOYT CONNECT(ボイットコネクト)」を導入しました。

導入前は施設内での職員間の連絡が固定電話とPHSに依存し、スタッフの所在確認や緊急時の連絡に時間を要していました。情報共有の確実性も低く、伝え忘れやミスが発生していたことも課題でした。また入浴介助などの緊急時では2名体制が必須だったとのことです。

導入後は、全スタッフとのリアルタイムな情報共有が可能になり、緊急時の対応や会話内容の自動テキスト化で業務効率と安全性が向上しました。また入浴介助中の緊急時には、その場で看護師を呼ぶことができるようになったことで、1名での対応が可能となり人員配置の効率化にもつながりました。

＞＞詳しい導入事例はこちら

インカム導入には国や自治体の補助金制度を活用できる場合があります。

医療機関向け生産性向上・職場環境整備等支援事業

▪️補助金の目的と概要

人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応するための緊急的な支援パッケージの一環として実施される補助事業です。令和6年度補正予算案では828億円が計上され、限られた人員でより効率的に業務を行える環境整備を支援し、医療人材の確保・定着を図ることを目的としています。

▪️ICT機器導入による業務効率化への活用

補助対象となる取り組みの一つが「ICT機器の導入による業務効率化」で、インカムも対象機器です。機器本体の購入費用、リース契約による導入費用、導入に必要なWi-Fi・ルーターなどの設備費用、事業期間内のサービス利用料まで幅広く対象となります。

機器1台あたりの購入価格に上限はありませんが、施設ごとの補助上限額が決められているため計画的に活用するべきでしょう。既存機器の単純なランニングコストやシステム更新費用は対象外となる点にご注意ください。

▪️申請手続きの流れ

申請は各都道府県の担当窓口に必要書類を提出します。同一法人が複数施設を運営している場合、都道府県ごとにまとめて申請可能です。

＞＞詳しくはこちらの記事で紹介しています

「VOYT CONNECT（ボイットコネクト）」は、医療・介護、宿泊施設向けに特化したインカムアプリです。音声認識技術と生成AIを活用し、現場の「手が離せない」「画面を見られない」状況での情報共有課題を解決します。

製品の特徴

▪️音声とテキストの同時記録

発話内容を自動的にテキスト化して保存するため「言った・言わない」の問題を根本的に解決します。シフト交代時の申し送りや、緊急時の対応記録も正確に残すことができ、記録業務が効率化できます。

▪️テキストを合成音声に変換して伝達

接客中や処置中など声を出せない状況でも、テキスト入力により情報共有が可能です。入力されたテキストは自動的に合成音声に変換されて伝達されるため、患者対応を中断することなくコミュニケーションがとれます。

▪️データ通信による安定した通信

データ通信を活用することで、建物構造や距離の制限を受けない安定した通信ができます。

他製品との差別化ポイント

▪️AI機能による業務支援

会話内容を自動で要約する機能により、情報を効率的に整理できます。また、多言語に対応した同時翻訳機能により、外国人スタッフとのコミュニケーションもスムーズに行えます。

▪️既存システムとの連携

ナースコールシステムとの連携により、患者からの呼び出し情報や診療情報をリアルタイムで共有できます。

▪️導入実績と信頼性

現在600施設以上での導入実績があり(2025年7月時点)、解約率1%未満という高い継続率を誇っています。医療現場での実用性と信頼性が実証されており、安心して導入いただけます。

インカム導入の成功には、事前の準備が鍵を握ります。よくある失敗パターンを避け、効果的に活用するためのポイントをご紹介します。

テスト導入の期間を設ける

本格的に導入する前に、実際の業務環境での試験運用を行うべきでしょう。電波状況や音質、使いかたを確認し、現場でどのような課題があるかを事前に想定しましょう。

特に医療現場では、医療機器への影響や患者への配慮も含めた総合的な評価が必要です。夜勤帯での使用感や、緊急時での操作性なども実際に確認することで、導入後のトラブルを防げます。

職員への研修・マニュアル整備

新しい通信手段に対するスタッフの不安を解消するため、段階的な研修プログラムを実施しましょう。基本操作から応用機能まで、実際の業務シーンを想定した研修が効果的です。

特にITに不慣れなスタッフには、わかりやすい操作マニュアルの作成と個別サポートが必要です。「思ったより簡単だった」という実感を持ってもらうことで、操作への抵抗感を減らすことができます。

トラブル対応体制を整える

機器の故障や通信障害に備えた対応体制を整えておくべきでしょう。24時間営業の医療機関では、夜間や休日のトラブル対応も考慮する必要があります。

メーカーや販売代理店のサポート体制を事前に確認し、故障時の代替機提供サービスや緊急連絡先を確認しておきましょう。

運用ルールの策定

効果的な活用のため、誰がいつ、どのように使用するかを明確に定めた運用ルールを策定しましょう。緊急時の連絡手順、定期的な情報共有のタイミング、機器の管理方法など、具体的なルールを設けることで、全スタッフが統一した使い方をできるようになります。

また、患者のプライバシー保護や情報セキュリティの観点からも、適切な使用方法を定めることが重要です。

PHSサービス終了を機に、多くの医療機関で新たな通信手段の導入が進んでいます。医療現場では、迅速で正確な情報共有が医療の質に直結するため、適切なインカムを選ぶことが重要です。

IP無線機、Bluetoothインカム、Wi-Fi対応システムなど、それぞれに特徴とメリットがあります。病院の規模や環境、用途に応じて適切なものを選ぶことで、業務をより効率化できることが導入事例により実証されています。

特に「VOYT CONNECT」のような音声認識技術と生成AIを活用したシステムでは、従来の通話機能に加えて、会話内容の自動記録や多言語への対応など、医療現場のDX推進にも貢献します。

国の補助金制度も活用できる今が、インカム導入の絶好のタイミングです。より良い医療を提供し、スタッフがより働きやすい環境を実現するため、ぜひ次世代型インカムの導入をご検討ください。

VOYT CONNECTの詳しい機能や導入事例については、下記より資料請求いただけます。

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