公開日: 2025.07.29 更新日:
2025.07.30
介護施設にはトランシーバー?インカム・PHSの違いとおすすめ徹底解説
「利用者の急変時に他のスタッフを呼ぶのに時間がかかってしまう」「入浴介助中に手が離せない状況でも他のスタッフと連絡を取りたい」「夜勤時に少ない人数で施設全体を見守るため、効率的な連携が必要」そんな課題を抱える介護施設は少なくありません。
人手不足が深刻化する介護業界では、限られたスタッフで質の高いサービスを提供するために、効率的なコミュニケーション手段が欠かせません。しかし「トランシーバー、インカム、PHSの違いがよくわからない」「どの通信機器が自施設に適しているか判断できない」という声も多く聞かれます。
この記事では、介護現場で使われる通信機器の特徴と選び方のポイント、実際の導入事例まで、現場の課題解決につながる情報をお届けします。最後まで読むことで、施設に最適な通信機器がわかり、導入の効果をイメージできるでしょう。
介護現場でのトランシーバー導入のメリット
介護現場では、スタッフ間のコミュニケーションが利用者の安全と職員の働きやすさを大きく左右します。急な体調変化への対応や夜勤時の体制など、スタッフ間のスムーズな連携が求められる場面は数多くあります。
業務効率化による時間の有効活用
トランシーバーやインカムの導入により、他のスタッフを探すための移動時間が削減されます。従来であれば「○○さんはどこにいますか?」と各フロアを歩き回って探していた時間が、ボタン一つで瞬時に連絡できるようになります。
またスタッフが本来の介護業務に集中できる時間が増えることで、利用者一人ひとりに向き合う時間も確保しやすくなります。
緊急時対応の迅速化
介護現場では、利用者の転倒や急な体調変化など、一刻を争う状況が発生します。このような緊急時にトランシーバーがあれば瞬時に複数のスタッフに状況を伝えることができ、迅速な対応ができます。
また入浴介助中や移乗介助中など、手が離せない状況でも、ハンズフリーで連絡を取ることができるため、利用者の安全を確保しながら連携をとることができます。
身体的・精神的負担の軽減
施設内を頻繁に移動する必要がなくなることで、スタッフの身体的負担が軽減されます。特に足腰への負担が大きい介護職にとって、無駄な移動の削減は働きやすさの向上に直結します。
また精神的な面でも、必要な時にすぐに支援を求められる安心感が生まれます。「困った時にすぐに相談できる」「緊急時にすぐに助けを呼べる」ことは、スタッフのストレス軽減につながります。
導入事例とその効果
インカムの運用方法は、大まかにスマートフォンにアプリを入れて使用する方法と、トランシーバーで通話する方法があります。ここでは、インカムアプリを導入した事例を紹介します。
東京都新宿区「メディアシスト市谷柳町」様の成功事例

東京都新宿区に位置する介護付き有料老人ホーム「メディアシスト市谷柳町」では、職員間コミュニケーションの課題を、インカムアプリ導入により解決しました。
▪️導入前の課題
スタッフ間の連絡はPHSに依存し、一対一の通話が基本でした。縦型構造の施設のため、職員の所在確認や緊急時の連絡に時間を要し、現場スタッフがリアルタイムで情報を確認することが難しい状況でした。そのため「誰がどこで何をしているか」を把握するために、何度も電話をかけ直す必要がありました。
▪️導入後の劇的改善
スマートフォン及びインカムアプリの導入により、全スタッフとのリアルタイム情報共有ができるようになりました。副施設長は「すごく便利だなと率直に思いました」と導入効果を評価しています。
▪️具体的な改善点:服薬管理
内服の確認の時も、以前はPHSでいちいち連絡していましたが、今はインカムで『○○様の薬を配ります』と伝えれば、その場で情報共有できます。置き薬の場合も『ナースステーションに置いておきますので受け取ってください』と一斉に共有できるので、伝達漏れが減りました。
トランシーバー・インカム・PHS(ピッチ)の違いと特徴徹底比較
介護現場で使用される通信機器を正しく選ぶために、それぞれの特徴を詳しく比較します。
基本的な違い
▪️トランシーバー
無線機の送信機と受信機を一体化した機器で、ボタンを押しながら話すプッシュツートーク(PTT)方式が基本です。災害時でも通信回線に依存せず使用できます。介護業界では交互通話タイプで通信機器の中でも特に防水性能が高く、耐久性に優れたものがトランシーバーと呼ばれることが多い傾向があります。
▪️インカム
正式名称は「インターコミュニケーションシステム」で、トランシーバーやスマートフォンにヘッドセットやイヤホンマイクを接続してハンズフリー通話を実現した状態を指します。両手を使った作業をしながらでも通話ができる点と、さらに複数人との同時通話機能を備えているものが多いのが特徴です。
▪️PHS(Personal Handy-phone System)
かつて介護現場で広く使用されていましたが、2023年3月に公衆PHSサービスが終了しました。現在でも構内PHSは使用できますが、新規導入は困難な状況です。
各機器の特徴と適用場面
▪️トランシーバーが適している場面
・水回りの業務(防水性の高い機種)
・災害時の緊急連絡
▪️インカムが適している場面
・入浴介助や移乗介助など両手を使う作業
・利用者対応中の静かな連絡
・リアルタイムな指導やサポートが必要な場面
▪️PHSの現状
2023年3月の公衆PHSサービス終了により、新規導入は現実的ではありません。既存の構内PHSも、故障時の修理や新規機器の調達が困難になっており、代替手段への移行が急務となっています。
介護現場におけるおすすめ通信機器はどれ?
介護現場での具体的な活用シーンを考慮して、最適な通信機器を検討してみましょう。
シーン別最適機器の選択
▪️入浴介助・水回り業務
IP67以上の防水性能を持つ機種であれば、水しぶきや湿気の多い環境でも安心して使用できます。ただし両手を使う作業が多いため、イヤホンマイクを接続してハンズフリーにすることをおすすめします。
▪️移乗介助・リハビリ中
利用者の安全を最優先に考える必要があるため、ハンズフリーかつ複数人に相談や応援を呼べるインカムが最適と言えるでしょう。介助中に急に支援が必要になった場合でも、作業を中断することなく連絡を取ることができます。
▪️夜勤・巡回業務
少ない人数で広い施設をカバーする必要があるため、通信距離が長く、複数人での通話が可能なシステムを取り入れるべきでしょう。Wi-Fi環境があればスマートフォンに入れて運用できるインカムアプリの活用も効果的です。
▪️記録業務・薬剤管理
正確性が求められる業務では、会話内容の記録機能があるシステムが有効です。インカムアプリならば、会話内容の録音や文字起こし機能を備えているものもあるので、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
現代の介護現場に最適なものは
これらの検討を踏まえると、現代の介護現場にはインカムアプリが最も適していると考えられます。
・既存のスマートフォンを活用できるため導入コストが低い
・Wi-Fi環境があれば建物の構造に関係なく安定した通信が可能
・アップデートにより機能向上が継続的に行われる
・会話内容の記録機能を備えて、情報共有の精度が向上
・AI翻訳機能に対応しているアプリもあり、外国人スタッフとの連携も円滑
特にAIインカム「VOYT CONNECT(ボイットコネクト)」のようなAI機能を搭載したインカムアプリでは、音声を自動でテキスト化する機能や、声を出せない状況でのテキスト入力による情報共有機能など、介護現場の特殊な状況に対応した機能が備わっています。
インカムアプリ「VOYT CONNECT」の利点と導入方法
ボイットコネクトは、介護・医療現場に特化して開発されたインカムアプリケーションです。現場の「手が離せない」「声を出せない」といった特殊な状況に対応した機能を搭載し、真の意味でのコミュニケーション課題を解決します。
アプリならではの利便性
▪️スマートフォンで利用可能
専用機器の購入が不要で、既存のスマートフォンやタブレットにアプリをインストールするだけで利用開始できます。機器の故障時も、アプリを別の端末にインストールすれば即座に復旧できるため、業務への影響を最小限に抑えられます。
▪️ネットワーク経由での広域通信
Wi-Fi環境を活用することで、建物の構造や距離の制限を受けない安定した通信が実現します。地下や鉄筋コンクリートの建物内でも、電波状況に左右されることなく確実な連絡が取れます。
▪️録音・記録機能の充実
発話内容の自動テキスト化により、「言った・言わない」の問題を解決します。
ボイットコネクト独自の機能
▪️AI機能による業務支援
会話内容が自動で要約されるため、重要な情報を効率的に整理できます。また、多言語対応の同時翻訳機能により、外国人スタッフとのコミュニケーションもスムーズに行えます。
▪️声を出せない状況での情報共有
利用者の対応中や静かな環境では、テキスト入力により情報を送信し、自動的に合成音声で伝達される機能があります。これにより、利用者への配慮を保ちながら必要な連絡を行えます。
▪️既存システムとの連携
ナースコールシステムや介護記録システムとの連携により、施設全体のICT化を推進できます。単独のツールではなく、業務全体の効率化を実現する統合ソリューションとして機能します。
導入の流れとサポート内容
①現状分析と導入計画
専門スタッフが現場を訪問し、現在のコミュニケーション課題を詳細に分析します。施設の構造や業務フロー、スタッフのITリテラシーなどを考慮した最適な導入プランを提案します。
②トライアル実施
実際の業務環境での試験運用を行い、効果測定と操作の確認を行います。この期間中に操作研修や運用ルールの策定も進めます。
③本格導入とサポート
トライアル結果を踏まえた本格導入を実施します。導入後もサポートを提供し、運用改善の提案や機能追加のアップデートを行います。
現在600施設以上での導入実績があり、解約率1%未満という高い継続率を誇っています。介護現場での実用性と信頼性が実証されており、安心してご導入いただけます。
トランシーバーの選び方のポイント
インカムアプリが現代の介護現場に最適であることをお伝えしましたが、施設の環境や運用方針によってはトランシーバーが適している場合もあります。適切な判断のために、選定のポイントを整理します。
改めて整理する各機器の特徴
▪️インカムアプリの特徴
・既存スマートフォンを活用、導入コストが低い
・AI機能による高度な業務支援
・会話記録・多言語対応などの付加機能
・Wi-Fi環境での安定通信
▪️トランシーバーの特徴
・通信インフラに依存しない独立性
・優れた防水・防塵性能
・災害時の緊急通信手段
・シンプルで直感的な操作
導入目的の明確化が重要
機器選定の前に、導入の目的を明確にするべきでしょう。
・主な使用場面はどこか?(屋内・屋外・水回り等)
・何名での使用を想定しているか?
・既存のICTインフラは整備されているか?
・予算の制約はどの程度か?
・将来的な機能拡張の可能性はあるか?
これらの答えによって、インカムアプリとトランシーバーのどちらが適しているかを判断できます。
トランシーバーを選ぶ場合の選定ポイント
トランシーバーの導入を決定した場合は、以下の要素を重視して機種選定を行いましょう。
▪️音質の確認
介護現場では正確な情報伝達が重要です。展示場やデモ機での音質確認は必須です。特に、騒音がある環境での聞き取りやすさを重視してください。
▪️耐久性と防水性能
IP67以上の防水性能があれば、入浴介助などの水回り業務でも安心です。また、落下や衝撃に対する耐性も確認しましょう。
▪️バッテリー持続時間
夜勤などの長時間シフトに対応できる16時間以上の連続使用が理想です。バッテリー交換の容易さも重要なポイントです。
▪️通信距離と範囲
施設の規模と構造に適した通信距離を確保できる機種を選択します。必要に応じて中継機の設置も検討しましょう。
▪️操作性とユーザビリティ
ITに不慣れなスタッフでも簡単に操作できる、直感的なインターフェースが重要です。ボタンの大きさや配置、表示の見やすさを確認してください。
導入時のチェックリスト
□ 電波調査の実施(建物内の通信状況確認)
□ スタッフへの操作研修計画の策定
□ 運用ルールの明文化
□ 保守・メンテナンス体制の確認
□ 予備機の確保
□ 既存システムとの干渉チェック
トランシーバー導入時の注意点やコスト面
トランシーバーや通信機器の導入を成功させるために、事前に確認すべき注意点を整理します。
導入前に確認すべき注意点
▪️電波干渉の確認
医療機器やナースコールシステムとの電波干渉が発生しないか、事前の調査が必要です。特にペースメーカーなどの医療機器への影響は、利用者の安全に直結するため慎重な確認が求められます。
▪️法規制
使用する周波数帯によっては、免許や登録が必要な場合があります。デジタル簡易無線では登録局の手続きが必要で、IP無線機では通信事業者との契約が必要です。
▪️建物構造による通信制限
鉄筋コンクリート造の建物や地下施設では、電波が届きにくい場合があります。実際の使用環境での電波調査を実施し、必要に応じて中継機の設置を検討しましょう。
▪️スタッフの習熟度格差
年齢層やITリテラシーに差があるスタッフが混在する現場では、操作習得に時間差が生じる可能性があります。段階的な導入と十分な研修期間の確保が重要です。
初期費用・運用コストの目安
▪️トランシーバーの場合
設備工事費+周辺機器(ヘッドセット、充電器等)+端末費用+操作研修・マニュアル整備等の人件費がかかります。総費用は施設規模や選択する機種によって大きく変動します。
また、継続的な運用費用として、バッテリー交換、消耗品の定期交換、メンテナンス費用なども発生します。一般的に業務用機器の耐用年数は4~5年程度のため、将来的な買い替え計画も考慮する必要があります。
▪️インカムアプリの場合
月額ライセンス費用+専用端末費用(必要な場合)+Wi-Fi環境整備費(必要な場合)+設定・研修費等の人件費がかかります。既存のWi-Fi環境や保有端末の活用により、初期費用を抑えることも可能です。
月額料金には機能アップデートや保守サポートが含まれているため、継続的なメンテナンス費用を抑えられる場合があります。
▪️運用コストの比較
従来型のトランシーバーは、購入後の月額費用は基本的にかからないものですが、バッテリー交換や故障時の修理費用が発生します。一方でインカムアプリは月額利用料が継続的に発生しますが、機能アップデートや保守サポートが含まれています。
【まとめ】トランシーバー・インカム・PHSを正しく選んで介護現場の連携力を向上しよう
トランシーバーは災害時の独立性や優れた耐久性という強みがあり、屋外業務や過酷な環境では今でも有効な選択肢です。一方で、AI機能や記録機能を活用したインカムアプリは、現代の介護現場が抱える複雑な課題を解決します。特にボイットコネクトのような介護現場向けのシステムなら、音声認識や翻訳機能で、今までにない便利な使い方ができます。
重要なのは、導入する目的を明確にし、施設に最適な機器を選択することです。現在の通信環境に課題を感じている施設の皆様は、ぜひ一度現状の分析から始めてみてください。
ボイット株式会社では、無償トライアルを行っており、導入後の継続的なサポートも提供しています。スタッフが働きやすい環境づくりのために、ぜひ次世代型インカムの導入をご検討ください。