公開日:  2025.07.24    更新日:  2025.07.24

ICT補助金とは?基礎と導入事例、申請方法まで徹底解説

「人手不足でスタッフが疲弊しているのに、ICT機器の導入費用が高くて踏み切れない」「補助金があるって聞いたけど、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」そんな悩みを抱える施設経営者は少なくありません。

 

特に介護・医療業界では、記録業務の複雑さや情報共有の課題が日常的に発生しており、ICT化への期待が高まっています。しかし導入コストが大きな壁となって、なかなか前に進めないのが現状です。

 

この記事では、ICT補助金の基本的な仕組みから申請のコツまで、現場の課題解決につながる情報をお届けします。記事を最後まで読むことで、自社に適した補助金の選び方がわかり、ICT導入による具体的な効果をイメージできるようになります。また、実際の申請手続きに関する不安や疑問も解消され、導入に向けた次のステップを踏み出せるでしょう。

 

なお、本記事の内容は厚生労働省の「令和5 年 度予算案の主要事項」を参照しております。

ICT補助金とは? 〜中小企業の経営基盤を安定させる制度〜

ICT補助金とは、IT導入補助金の介護・医療版として位置づけられるような制度で、介護・医療分野における情報技術の導入を支援するものです。正式には「介護テクノロジー導入支援事業(通称:介護ICT補助金)」と呼ばれ、各都道府県の「地域医療介護総合確保基金」を財源として実施されています。

この制度が生まれた背景には、国のDX(デジタルトランスフォーメーション)政策があります。急速に進む高齢化と深刻な人手不足、そして国際競争力の維持という3つの大きな課題に対処するため、政府は各業界でのデジタル化を強力に推進しています。

特に注目すべきは、ICT補助金が「経営の安定化策」として設計されている点です。効率化による人件費削減だけでなく、スタッフの働きやすさ改善による人材定着など安定した経営の土台作りを目指しています。

令和3年度には全国47都道府県で実施され、5,371もの事業所が補助金を活用してICT化を実現しました。このように多くの施設で導入が進んでいる背景には、単なるコスト削減を超えた経営価値があることが実証されているからです。

ICT補助金の対象をわかりやすく解説

ICT導入支援事業で補助対象となる機器・サービスは以下の4つのカテゴリに分類されます。

1. 介護ソフト・システム

記録業務、情報共有、請求業務で転記が不要なソフトウェアが対象になります。介護報酬請求に特化したものではなく、以下の機能を持つものが条件となります。

・ケアプラン連携標準仕様対応

・入退院時情報標準仕様対応

・看護情報標準仕様対応

・財務諸表のCSV出力機能

2. 情報端末機器

タブレット端末、スマートフォン、インカムなどの購入費用が対象です。ただし、多くの自治体では介護ソフトのインストールを義務付け、私用利用の禁止を条件としています。

3. 通信環境機器

Wi-Fi機器の購入・設置費用、ネットワーク構築経費が含まれます。安定した通信環境は、ICT活用の基盤となる重要な要素です。

4. 運用経費

クラウド利用料、サポート費用、保守費用など、ICT機器を継続的に運用するための費用も補助対象となります。

これらの機器を組み合わせることで、現場の業務フローを大幅に改善できます。詳しい活用例については、介護現場でのICT活用について詳しく記載した記事もご参照ください。

参照:厚生労働省資料

ICT補助金を活用して解決できる「本当の課題」とは?

ICT補助金の本当の価値は、効率化だけでなく、現場の根本的な課題を解決できることです。多くの施設が抱える課題に対し、ICT活用がどのような解決策を提供するかを見てみましょう。

経営層が抱える課題と解決策

▪️属人化の防止

ベテランスタッフに依存した業務運営から脱却し、誰でも一定品質のサービスを提供できる体制を構築できます。記録の標準化やノウハウの共有により、人材の流動にも対応できる強固な組織作りが可能です。

▪️経営判断の迅速化

リアルタイムなデータ収集により、感覚的な判断から数値に基づいた経営判断へ転換できます。稼働率や収益性の把握が容易になり、戦略的な事業運営が実現します。

メリット

▪️ミスの削減

手書きによる記入ミスや伝達ミスを大幅に削減し、利用者・家族からの信頼向上につながります。クレーム対応の時間が減ることで、本来の業務に集中できる環境が整います。

▪️スタッフ管理の効率化

シフト管理や業務分担の最適化により、適切な人員配置ができます。残業時間の削減や有給取得の促進など、働きやすい職場づくりにも貢献します。

従業員が実感する変化

▪️身体的負担の軽減

繰り返し作業の自動化により、腰痛や肩こりなどの身体的負担が軽減されます。特に夜勤時の記録業務が楽になることで、スタッフの疲労度が大幅に改善されます。

▪️やりがいの向上

事務作業時間が減ることで、利用者との関わりの時間が増え、本来の介護業務にやりがいを感じられるようになります。

注意すべきポイント

ただし、補助金をもらうことが目的になってしまわないよう注意が必要です。導入後の運用体制や研修計画もしっかりと検討し、本当に現場の課題解決につながるシステムを選択することが大切です。

ICT補助金 申請条件と申請手続きの完全ガイド

ICT補助金の申請には、いくつかの条件をクリアする必要があります。手続きの流れと注意点を詳しく解説します。

申請の基本要件

①導入計画の作成

現在の課題を分析し、ICT導入による具体的な改善効果を明記した計画書が必要です。特に「文書量の半減」を目標とした計画を作成することで、補助率を1/2から3/4に拡充できます。

「文書量の半減」とは、紙の書類やファイリングが必要な文書を50%以上削減することを指します。具体的には、手書きの介護記録をタブレット入力に変更する、紙のケアプランを電子化する、印刷していた申し送り書類をデジタル共有に切り替えるなどの取り組みが該当します。

②SECURITY ACTIONの宣言

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★(一つ星)」または「★★(二つ星)」のいずれかを宣言する必要があります。

★(一つ星):情報セキュリティ5か条への取り組み

★★(二つ星):情報セキュリティ基本方針の策定・公開

参照:よくある質問|IPA

ICT補助金の上限額について

ICT導入支援事業の補助金は、施設の職員数に応じて上限額が設定されています。

職員数 上限額
1〜10名 100万円
11〜20名 160万円
21〜30名 200万円
31名以上 260万円

基本的な補助率は1/2ですが、以下の要件を満たすことで3/4に拡充されます。

▪️補助率拡充の要件(いずれか一つ)

・ICT導入計画で文書量の半減が実現されていること
・LIFEのCSV連携機能を実装した介護ソフトを使用し、LIFEへデータ提供していること
・ケアプランデータ連携システムを利用し、外部とのデータ連携をとっていること

申請手続きの流れ

①業務分析

現場スタッフへのヒアリングを実施し、課題の洗い出しとICT化の目標設定を行います。この段階でスタッフの協力を得ることが、後の導入成功につながります。

②導入計画の策定・交付申請

システム会社から見積もりを取得し、具体的な導入計画を作成します。各都道府県の申請窓口に必要書類を提出します。

③審査・採択通知

都道府県による審査が行われます。申請内容に不備がないよう、事前に窓口で確認することをおすすめします。

④ICT導入・活用

採択通知を受けてから実際の導入作業を開始します。この時点で契約・購入・設置を行います。

⑤導入効果の報告

各都道府県が定める様式で厚生労働省へ効果報告を行います。報告義務は2年間継続します。

注意点

▪️補助金の交付は後払い

実際の補助金支給は導入効果を報告した後となります。初期費用は自己資金で賄う必要があるため、資金計画をしっかりと立てておくことが大切です。

▪️都道府県ごとの違い

具体的な申請要件や補助率は都道府県によって異なります。必ず所在地の都道府県ホームページで詳細を確認してください。

成功事例で見るICT補助金活用【現場がこう変わった】

厚生労働省のICT導入支援事業令和3年度導入効果報告によると、実際にICT化を実現した施設では驚くべき効果が報告されています。

数値で見る導入効果と、現場の生の声をご紹介します。

文書・記録業務の劇的改善

・文書作成の時間が短くなった:81.9%
・入力済みの情報を他の文書でも利用できるようになった:84.8%
・記録に要する時間が削減された:78.7%
・記録が充実した(読みやすさ、誤字脱字の減少、内容の充実):78.1%

情報共有・コミュニケーションの向上

・情報共有がしやすくなった:90.3%
・事業所内の情報共有が円滑になった:88.0%
・事業所外との情報共有が円滑になった:56.3%

業務効率化の実現

・全体の業務量が減った:68.5%
・ファイリングの時間が減った:75.3%
・過去の文書(データ)の検索性が向上した:72.4%
・保存のために必要な場所が減少した:72.7%

事業所運営に関する改善

・業務の役割分担ができた
・職員の休暇が取得しやすくなった
・風通しのよい職場づくりができた
・職員一人あたりの訪問件数が増え、経営の安定化が図れた

記録・事務作業の質向上

・記入ミスが減った
・記録の標準化の意識が高まった
・印刷コストが抑えられた
・外国人技能実習生が記録業務をできるようになった

職員の意識・働き方の変化

・テレワークができるようになった
・職員の業務改善の意欲が高まった
・新しい提案が増える等、職員の就業意欲向上につながった

参照元:I C T 導 入 支 援 事 業 令 和 3 年 度 導 入 効 果 報 告 取 り ま と め

特に注目すべき効果

「支援の質の向上に活かせるようになった」と回答した施設が75.6%に上ることは特筆すべき点です。単なる効率化を超えて、利用者への本質的なサービス向上につながっていることがわかります。

また「根拠に基づいて議論ができるようになった」(60.9%)という回答からは、感覚に頼った運営から客観的データに基づく科学的な介護への転換が進んでいることが読み取れます。

これらの事例からもわかるように、ICT導入は投資対効果の高い経営戦略といえるでしょう。

ボイットコネクト導入はICT補助金対象!導入メリットを徹底解説

「VOYT CONNECT(ボイットコネクト)」は、ICT補助金の対象となるインカムアプリケーションです。医療・介護・宿泊業界に特化した設計で、現場の「手が離せない」「画面を見られない」状況での情報共有課題を根本的に解決します。

ICT補助金対象となる理由

ボイットコネクトは、福祉用具情報システム(TAIS)で介護テクノロジーとして選定されております。重点分野に該当する介護テクノロジーとして認められており、補助金を活用して導入できる可能性が高いです。

>>詳しくはこちらの記事で紹介しています

他社製品との差別化ポイント

▪️音声とテキストの同時記録機能

発話内容を自動的にテキスト化して保存するため「言った・言わない」の問題を根本的に解決します。シフト交代時の申し送りや緊急時の対応記録も正確に残せ、記録業務の効率化が実現できます。

▪️声を出せない状況での情報共有

接客中や処置中など声を出せない状況でも、テキスト入力により情報共有ができます。入力されたテキストは自動的に合成音声に変換されて伝達されるため、利用者対応を中断することなくコミュニケーションが取れます。

▪️AI機能による業務支援

会話内容を自動で要約する機能により、情報を効率的に整理できます。また、多言語対応の同時翻訳機能により、外国人スタッフとのコミュニケーションもスムーズに行えます。

>>詳しくはこちらの記事で紹介しています

導入実績

現在600施設以上での導入実績があり、継続利用率99%以上という高い継続率を誇っています。医療・介護現場での実用性と信頼性が実証されており、安心してご導入いただけます。

ICT補助金申請サポート

ボイット株式会社にはICT補助金コンサルタントが在籍しており、申請手続きから導入後のサポートまでトータルでお手伝いいたします。「補助金の申請は複雑で不安」という方も、専門スタッフが丁寧にサポートしますので、お気軽にご相談ください。
>>お問い合わせはこちら

【まとめ】今すぐ始めるICT補助金活用と導入相談のご案内

ICT補助金は、単なるコスト削減支援ではなく、安定した経営の土台作りを目指す経営戦略ツールです。人手不足や業務効率化という目先の課題解決を超えて、利用者満足度の向上、スタッフの働きやすさ改善、そして安定した事業運営の実現につながります。

記事の要点振り返り

  1. ICT補助金は介護・医療分野に特化した経営安定化の制度で、各都道府県が実施しています。
  2. IT導入補助金との違いは対象業界と財源にあるため、自社の業界に合った制度を選ぶことが大切です。
  3. 補助対象となるのは介護ソフト、情報端末、通信環境、運用経費の4つのカテゴリで、目的は属人化防止、ミス削減、人材定着といった経営課題の解決にあります。
  4. 申請を成功させるには事前の業務分析と導入計画の質が重要で、実際に80%以上の施設で業務時間短縮という効果が実証されています。
  5. ボイットコネクトも補助金対象となっており、コンサルタントによる申請サポートを提供しているため、安心してご相談いただけます。

次のステップへ

ICT化を検討されている施設経営者の方、現場責任者の方は、まずは現状の課題整理から始めてみませんか。ボイット株式会社では、無料で現状分析と導入効果予測を行っており、補助金活用の可能性も含めて詳しくご説明いたします。

「うちの施設でも本当に効果があるのか知りたい」「補助金申請の手続きが不安」「他の施設の具体的な事例を聞きたい」など、どのようなご質問でもお気軽にお問い合わせください。

専門スタッフが丁寧にお話を伺い、貴施設に最適なICT化プランをご提案いたします。まずは資料請求から始めて、成功事例や具体的な導入効果をご確認ください。

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