海を望む大型旅館「稲取銀水荘」

静岡県賀茂郡東伊豆町に佇む稲取銀水荘は、伊豆半島を代表する老舗高級旅館です。地上10階建ての建物からは、広大な相模灘を一望できる絶景が広がります。その雄大な海の景色を客室や大浴場から存分に堪能できることが、訪れる宿泊客を魅了してやみません。
旅の醍醐味である温泉は自家源泉を所有し、豊富な湯量を誇ります。料理においても、稲取漁港で水揚げされる名産の金目鯛をはじめ、伊豆の旬の海の幸、山の幸を活かした会席料理が宿泊客を満足させています。約100室、最大513名の宿泊客を収容可能な規模で、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」のおもてなし部門で長年上位にランクインするなど、その接客品質は業界内でも高く評価されています。
「当たり前のことは当たり前に、当たり前のことはそれ以上に」という経営理念を掲げる稲取銀水荘ですが、規模の大きさゆえに各部署間のコミュニケーションには課題がありました。駅までの送迎に加えて10階建ての館内で働くスタッフ同士がいかに連携し、お客様に最高のおもてなしを提供するか—その解決策を求めていました。
一体感を生み出すフロント対応
「お迎えから始まるおもてなし」

稲取銀水荘のフロント部門では、AIインカムの導入により、ゲスト対応の質が大きく向上しました。
「以前は部署内でしか通信できなかったのですが、今は館内全体で共有ができ、コミュニケーションが非常にスムーズに取れています」と支配人の長田さんは語ります。
特に効果が現れているのは、チェックイン業務です。フロントスタッフ、玄関前でお客様を出迎えるスタッフ、荷物運搬担当など、約15〜20名のスタッフが連携し、シームレスな対応を実現しています。
サービス部マネージャーの栗林さんによれば、「駐車場に到着されたお客様のお名前をお伺いして、フロントカウンターのスタッフとやり取りし、どのお部屋のお客様かすぐに分かるようになりました。特別な対応が必要な場合も、フロントから素早く情報共有できます」
また、高層階の客室へ荷物を届けた際にお客様が不在だった場合、従来であればフロントまで一度戻る必要がありましたが、現在ではインカム経由で指示を受け、その場で待機することができるようになりました。これにより、無駄な移動時間を削減し、より効率的なサービス提供が可能になっています。
さらには、送迎バスとの連携も強化され、「駅から何名のお客様をお送りするか、バスに乗り切らない場合は小型バスを追加で出す必要があるなど、リアルタイムで情報共有できるようになりました」と栗林さんは説明します。
お客様のペースに寄り添う会席料理の提供
一期一会の料理体験

稲取銀水荘のダイニング「銀の海」では、朝食はビュッフェ形式、夕食は一品ずつ提供する会席スタイルで、お客様のペースに合わせた料理提供が求められます。調理部スタッフの大谷さんによれば、AIインカム導入により厨房とホールスタッフ間の連携が格段に向上しました。
「主に調理スタッフは料理のオーダーを仲居さんから通していただいて、それに合わせて料理を作っています。焼き物や天ぷらなどは、オーダーが通ったタイミングで調理を始めるため、コミュニケーションのタイミングが重要です」と大谷さん。
また、特に重要なのがアレルギー情報の共有です。「お客様のアレルギー情報もインカムを通して共有しています。事前に把握していた情報を確認し、当日も再度確認することで、安全な料理提供を徹底しています」
また、到着が遅れたお客様への対応も円滑になりました。長田支配人は「ダイニングとフロントの連携が特に良くなりました。到着が遅いお客様について、『今、お客様が到着しました』と即時共有できるので、以前は電話でやり取りしていたものが、より早く連携できるようになりました」と語ります。
この結果、お客様を待たせる時間が減少し、料理が最適な温度で提供できるようになったことで、顧客満足度の向上につながっています。
時間の流れに合わせて変化するラウンジサービス
24時間寄り添うくつろぎの空間作り

稲取銀水荘のラウンジは24時間営業で、時間帯によってメニューが変わるシステムを採用しています。サービス部の室伏さん(写真)によれば、カウンターに立つスタッフと後方で準備するスタッフとの連携にAIインカムが大いに役立っています。
「メニュー切り替えの際、『今から下げます』『これ持ってきてください』など裏の方に伝えて手伝ってもらう際に便利です。」と室伏さん。特に混雑状況の共有が効果を発揮しています。「朝食の会場時間になるとラウンジも混んできますので、『今このくらいラウンジが混んでます、お客様がお待ちです』とダイニングに伝えます。するとダイニングでも『ラウンジが混んでいるから早めに開けよう』といった判断ができるようになりました」
また、着物を着用している室伏さんにとって、従来の重いトランシーバーと比べてスマートフォンベースのシステムは着崩れの心配が少なく、見た目にも配慮した使用ができる点が大きなメリットだといいます。
「以前は帯がずれてしまったという声も聞いていましたが、現在はそういった部分にも気を払わずに使用できています。」
見えない連携が生み出す感動体験
部署の壁を超えたおもてなし

稲取銀水荘では、部署を超えた連携が格段に向上したことで、よりきめ細やかなサービス提供が可能になりました。
例えば、誕生日のお祝いなど特別なサプライズ対応が素早くできるようになりました。室伏さんは「当日誕生日というお客様がいらっしゃった時、すぐにスタッフ間で共有ができ、プレゼントがすぐに用意されていたのでお客様にお渡しして喜んでいただけました。迅速な対応がおもてなしに還元できています」と説明します。
また、休憩から戻ったスタッフが状況を素早く把握できる点も大きな変化です。「休憩から戻ってきて何をすればいいか分からない時に、文字起こしを確認して、現在のお客様状況を確認してから合流するようにしています」と室伏さん。
長田支配人は「10階建ての大型施設で、様々なセクションがありますが、これまで連絡が取りづらかった課題が解消されました。迎えのバスまで連携できるのが素晴らしいですね」と評価します。
まとめ
稲取銀水荘の事例は、AIインカム「VOYT CONNECT」が旅館業におけるサービス品質の向上にいかに貢献できるかを示しています。「おもてなし」の質を支えるのは、スタッフ間の緊密な連携と情報共有にあるといえるでしょう。部署の壁を越えたシームレスなコミュニケーションが、顧客満足度の向上につながるという好循環を生み出しています。
<施設概要>
名称:稲取銀水荘(いなとりぎんすいそう)
会社名:株式会社ホテル銀水荘
所在地:〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1624-1
アクセス:
・東京から直通特急「踊り子」で稲取駅まで約2時間20分
・新幹線利用の場合:東京→熱海→伊豆稲取(伊東線・伊豆急)で約2時間20分
・伊豆稲取駅から送迎バスで約5分(13:00~19:00は予約制)