2024.11.08
介護ICTとは – 現場で活用される種類と導入事例
介護施設において、ICT(情報通信技術)の導入は、スタッフの業務効率化やケアの質の向上に欠かせません。高齢化社会の進展と共に介護ニーズが増大する中、介護現場では人手不足が深刻な課題となっており、ICTの導入はこの課題を解決するための重要な手段として注目されています。厚生労働省も介護報酬改定を通じてICTの活用を推進し、その利用を加算要件に含めることで、導入を後押ししています。
本コラムでは、介護ICTの基本概念から具体的な導入事例までを掘り下げ、各ツールが現場でどのように活用されているかを解説していきます。
介護ICTとは何か
介護現場において、人材不足や業務負担の増加が深刻な課題となっている中、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の導入が注目を集めています。介護ICTとは、介護サービスの質の向上と業務の効率化を実現するための情報通信技術の総称です。例えば、情報の共有をリアルタイムで行い、正確な対応を可能にする電子カルテ、入退院管理システム、インカムシステムなどのツールが含まれます。これにより、紙媒体での記録管理に起因する非効率な業務を解消し、記録作業の効率化やデータ管理の正確性が向上します。こうしたツールは、現場における業務の負担を軽減し、ケアの時間を確保するためにも重要です。
ICTを導入することで、業務の流れが整理され、職員間の情報共有がスムーズになり、現場の状況に応じた適切な対応が迅速に取れるようになります。これにより、利用者の安心感が高まり、信頼関係の向上にも寄与します。
介護現場でのICTツールの具体例
介護現場で活用されるICTツールには、以下のようなものがあります。
電子カルテ:利用者の情報を一元管理し、職員間で共有することで、ケアプランやアセスメントの精度を向上させます。これにより、利用者の状態がより正確に把握され、適切なケアを提供できるようになります。
タブレット端末:現場での記録入力やデータ閲覧を効率的に行えるため、情報管理がスムーズになります。特に、リアルタイムでの入力は情報の更新が迅速になり、紙媒体での手間を省きます。
見守りセンサー:高齢者の行動をモニタリングし、転倒や異常を検知して即座に通知します。これにより、職員は必要な時に適切な対応を行えるため、利用者の安全を守りつつ業務負担を軽減できます。
音声コミュニケーションツール(インカム):スタッフ同士がリアルタイムで情報を共有し、緊急時の対応や業務連携を迅速に行えるようになります。これにより、情報の伝達が円滑になり、現場の効率化に貢献します。インカムの使用は、状況に応じた即時の連絡が求められる現場において特に有用です。
介護ICT導入によるメリットと事例
ICT導入によって得られる具体的なメリットと事例は以下の通りです。厚生労働省の資料から導入効果の例をいくつかまとめてみました。
情報共有の迅速化
電子カルテを導入した施設では、リアルタイムで利用者の情報が職員間で共有され、ケアプランの確認やアセスメントが効率的に行えるようになりました。これにより、情報の伝達ミスが減り、スタッフ全員が一貫した情報を基にケアを提供できるようになっています。
タブレット端末を使用することで、現場での記録作業が簡素化され、情報の一元管理が実現。これにより、記録内容の検索や更新が迅速になり、時間の無駄が削減されました。スタッフの情報へのアクセスが容易になることで、現場での意思決定がスムーズに行われ、ケアの質が全体的に向上します。
業務負担の軽減
見守りセンサーを活用する施設では、高齢者の行動をモニタリングし、転倒や異常を検知した際に即座に通知される仕組みを導入。これにより、職員の負担が減り、利用者の安全を効率的に守れるようになりました。日常業務においても、監視業務が自動化されることで、職員は他の重要な業務に集中できるようになります。
インカムの活用によって、職員は無駄な移動や確認作業を削減でき、業務効率が向上。情報伝達の際に別のスタッフを探し回る必要がなく、指示や報告が即座に完了します。これにより、業務負担が大幅に軽減されました。さらに、緊急時の即時対応が可能になり、チーム全体の協力体制が強化されます。
ケアの質の向上
インカムを使用することで、スタッフ同士のタイムリーな情報共有が可能となり、緊急時の対応が迅速化されました。これにより、利用者の安全が確保され、重大な事故を未然に防ぐことができる効果が報告されています。急な体調変化や緊急事態においても、全スタッフが適切な対応を迅速に取れるため、利用者の信頼感が向上します。
電子カルテやタブレット端末の導入により、職員はリアルタイムで利用者情報にアクセスし、適切なケアプランを作成・実行できます。これによって、ケアの質が高まり、迅速かつ正確な対応が可能になります。継続的な情報の更新と閲覧が可能なため、ケアの継続性と精度も向上します。
見守りセンサーを利用することで、高齢者の行動や体調の変化をモニタリングし、異常が発生した際には即時に通知が届くため、迅速な対応が可能です。これにより、利用者の安全を維持し、スタッフの負担を軽減することができます。これらのツールの併用により、施設全体でのケアの質が総合的に改善されます。
介護ICT導入の課題と解決策
介護現場へのICT導入には、いくつかの重要な課題が存在します。これらの課題を事前に認識し、適切な対策を講じることが、成功的な導入のために不可欠です。
主な課題の一つ目は、初期導入コストや運用費用の問題です。ICT機器やソフトウェアの導入には多額の初期投資が必要となり、特に小規模施設にとっては大きな負担となります。これが導入を躊躇する最も大きな要因の一つとなっています。この課題に対する解決策として、厚生労働省や各自治体が提供する「介護ICT補助金」や「ICT導入支援事業」の活用が有効です。これらの支援制度を利用することで、初期導入コストを大幅に軽減することができます。また、一定の要件を満たす場合には介護報酬の加算対象となり、継続的な運用コストの一部を補うことも可能です。
二つ目の課題は、職員の習熟度の問題です。新しいシステムを効果的に運用するためには、職員のICTスキル向上が必須となります。特に、介護現場では年齢層や経験が様々な職員が働いているため、個人によって習熟度に大きな差が生じやすい傾向にあります。この課題に対しては、計画的な研修体制の整備が重要です。定期的な研修会の実施や、日常的なサポート体制を確立することで、職員がICTを効果的に活用できる環境を整えることができます。特に導入初期には、きめ細かなサポートを提供し、職員の不安や戸惑いを軽減することが重要です。また、導入後も継続的なサポート体制を維持することで、運用時に発生する問題を迅速に解決し、システムの定着を図ることができます。
三つ目の課題は、既存の業務フローの見直しです。ICT導入により、これまでの業務の進め方が大きく変わる可能性があります。この変化に対する職員の抵抗感や、業務の混乱を最小限に抑える必要があります。この課題に対しては、段階的な導入アプローチが有効です。すべてのシステムを一度に導入するのではなく、優先度の高い機能から順次導入していくことで、職員の負担を軽減し、スムーズな移行が可能となります。また、導入前に十分な期間を設けてトライアル運用を行い、問題点の洗い出しと改善を行うことも重要です。
これらの課題に対して適切な対策を講じることで、ICT導入の成功率を高め、より効果的な活用が可能となります。特に、補助金制度の活用と充実した研修・サポート体制の整備は、導入成功の重要な鍵となります。詳細な補助金制度や導入ガイドラインについては、厚生労働省のウェブサイトで最新の情報を確認することをお勧めします。
自社のスマホインカムアプリの紹介
これまで紹介したように、介護ICTには様々な種類がありますが、その中でもコミュニケーションツール、特にインカムは、比較的導入がしやすく、即効性の高いICTソリューションとして注目を集めています。
弊社では、介護現場のコミュニケーションを改善する、スマートフォンベースのインカムアプリ「フィールドボイスインカム」を提供しています。すでに500施設以上での導入実績があり、介護現場に欠かせないコミュニケーションインフラとして高い評価をいただいています。
当社のインカムアプリは、介護現場特有のニーズに応える4つの特長を備えています。
①会話内容が音声とテキストで保存され、いつでも振り返ることができます。これにより、休憩明けでもすぐに現場の状況把握が可能で、申し送りの効率化にも貢献します。
②利用者の前など声を出しにくい場面でも、テキスト入力による情報共有が可能です。入力されたテキストは合成音声で他のスタッフに伝えられるため、どんな状況でも確実な情報伝達が実現できます。
③フロア間や離れた場所でもスムーズなコミュニケーションが可能です。インターネットに接続できれば、建物の構造に関係なく、どこからでも会話に参加できます。
④ナースコールなどの既存システムと連携が可能で、誰が対応するかをリアルタイムで共有できます。これにより、スタッフの無駄な動きを減らし、より効率的なケアの提供が実現できます。
このように、当社のインカムアプリは、介護現場での「つながる」「伝わる」「振り返れる」を実現し、スタッフの業務効率向上とサービス品質の向上に貢献します。
まとめ
介護ICTの導入は、業務効率の向上やケアの質の向上に貢献し、スタッフと利用者の双方に大きなメリットをもたらします。詳細な導入ガイドラインや補助金制度については、厚生労働省のウェブサイトをご参照ください。介護現場のデジタル化は、今後ますます重要になっていくと考えられます。
弊社のスマホインカムアプリも、介護施設内の連携を強化し、日々のケアをより効率的に進めるための強力なツールです。インカムアプリの詳細情報や導入事例について知りたい方は、ぜひ下記ページもご覧ください。
※本記事で紹介した内容は2024年11月時点のものです。最新の情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。