2024.11.27

トランシーバーの距離はどのくらい?現場で使える通信距離を伸ばすコツ

施設内での円滑なコミュニケーションは、業務効率と安全性の要となります。トランシーバー(無線機)は現場での重要なコミュニケーションツールですが、「どの程度の距離まで通信できるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。実は、トランシーバーの種類によって通信距離は大きく異なり、それぞれに特徴があります。

トランシーバーの通信距離は種類によって異なる

現在主流となっているトランシーバーは、大きく3つのタイプに分けられます。まず、特定小電力トランシーバーは、最大通信距離が約500mで、免許不要で使用できる手軽な機種です。この距離は、一般的なショッピングモールの端から端までの距離や、小規模な工場の敷地内程度をカバーできる範囲です。しかし、これは理想的な環境での最大値であり、実際の建物内では状況が大きく異なります。例えば、3階建ての施設で1階と3階の通信は壁や床による電波の遮断で著しく不安定になり、エレベーターホールや防火扉の周辺では全く通じないことも珍しくありません。特に医療施設や介護施設では、この通信の不安定さが重大な問題となっています。

次に、簡易業務用無線機は、最大通信距離が約5kmと長距離通信が可能です。これは東京駅から皇居を越えて国会議事堂付近まで、または一般的な市街地であれば複数の町にまたがる範囲をカバーできる距離です。しかし、この距離も見通しの良い屋外での理論値です。実際の都市部では建物の谷間や地下施設では通信が困難で、20階建てのビル内でも電波が届かないエリアが発生します。特に緊急時の確実な連絡が必要な現場では、この通信の不確実性が大きな課題となっています。

そして3つ目が、IP無線機は、携帯電話網を利用するため、その圏内であればどこでも通信が可能です。一見すると理想的な解決策に見えますが、携帯電話の電波が届きにくい建物の中心部や地下深くでは使用できません。また、災害時など携帯電話網が混雑する状況では通信が困難になる可能性があります。さらに、医療機器への影響を考慮しなければならない区域では使用が制限される場合もあります。

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トランシーバーの電波が届かない原因

施設内でのトランシーバー使用において、「仕様上の通信距離なのに繋がらない」という声をよく耳にします。これは、カタログに記載された通信距離が理想的な環境下での数値であり、実際の使用環境では様々な要因で通信品質が低下するためです。

特に深刻な影響を与えるのが建物の構造です。鉄筋コンクリート造りの建物では、壁や床に使用される金属製の建材が電波を遮断してしまいます。ある総合病院では、わずか3フロアの建物でも、1階と3階の間で通信が途切れるという問題が発生していました。また、エレベーターホールや防火扉の周辺は特に通信状態が悪く、緊急時の連絡に支障をきたすケースもありました。

医療機器からの電波干渉も見逃せない問題です。MRIやCTスキャンなどの大型医療機器の周辺では、トランシーバーの電波が乱れやすく、重要な情報が聞き取れなくなるリスクがあります。ある救急救命センターでは、医療機器への影響を考慮して、特定エリアでのトランシーバー使用を制限せざるを得ない状況でした。

さらに、同じ周波数帯を使用する他のトランシーバーとの干渉も大きな課題です。特に特定小電力トランシーバーでは、利用可能なチャンネル数が限られているため、近隣施設との混信が発生することがあります。ある介護施設では、近くの工事現場でも同じ周波数のトランシーバーが使用されており、重要な介護情報の伝達に支障が出るケースがありました。

従来型トランシーバーの通信上の課題は、単なる距離の問題だけではありません。建物構造、医療機器との干渉、他機器との混信など、実際の現場では複雑な要因が絡み合っています。これらの課題を包括的に解決するためには、従来の発想にとらわれない新しいコミュニケーションツールの導入を検討する必要があるでしょう。

トランシーバーの通信距離を伸ばす:現場で使える3つの改善方法

以下では、特に一般的に使用されている特定小電力トランシーバーに焦点を当て、現場ですぐに実践できる改善方法をご紹介します。なお、これらの方法は主に特定小電力トランシーバーを対象としたものであり、簡易無線やIP無線機には適用できない、もしくは効果が限定的な場合があることにご注意ください。

1つ目の改善方法は、アンテナの最適化です。トランシーバーの通信距離は、アンテナの性能に大きく左右されます。短いアンテナを長いものに交換することで、理論上は通信距離を1.5倍程度伸ばすことが可能です。しかし、この方法には重要な注意点があります。ある介護施設では、アンテナを長くしたことで確かに通信距離は改善しましたが、入居者の介助時に邪魔になったり、アンテナが物にひっかかったりするなど、新たな問題が発生しました。また、電波法の規制により、特定小電力トランシーバーでは使用できるアンテナの種類が制限されているため、改善できる範囲も限定的です。

2つ目は、中継器の設置です。中継器を使用することで、理論上は通信距離を2倍程度に延長できます。ある総合病院では、各フロアの中央に中継器を設置することで、建物全体をカバーしようと試みました。しかし、実際には新たな課題が浮上しました。中継器の設置場所によっては電波が干渉し合い、かえって通信品質が低下するケースが発生したのです。また、医療機器への影響を考慮すると、設置場所が大きく制限されてしまいます。さらに、中継器自体の維持管理も必要で、定期的なメンテナンスや電源の確保なども考慮しなければなりません。

3つ目は、トランシーバーの使用方法の最適化です。例えば、できるだけ高い位置で使用する、窓際や廊下など見通しの良い場所で通信するなどの工夫です。ある特別養護老人ホームでは、スタッフステーションでのトランシーバーの置き場所を、机の上から専用の壁掛けホルダーに変更することで、通信状態の改善に成功しました。しかし、この方法も万能ではありません。緊急時には最適な場所まで移動する余裕がないことも多く、また、建物の構造上の制約から、理想的な使用場所の確保が難しいケースも少なくありません。

これらの改善方法は、確かにある程度の効果は期待できます。しかし、どの方法も現場の実情を考えると本質的な解決策とは言えません。特に医療・介護現場では、確実な情報伝達が人命に関わる重要な要素となります。トランシーバーの通信距離を伸ばすための工夫を重ねても、建物の構造や医療機器との干渉、緊急時の確実性など、根本的な課題は残されたままです。

トランシーバーの距離制限を超える:最新ツールの活用法

医療・介護施設での通信手段は、従来型のトランシーバーからIP無線機、そして最新のインターネット活用型インカムアプリへと進化を遂げています。特に、施設内のWi-Fiネットワークやデータ通信を活用したインカムアプリは、従来の課題を解決する新たな選択肢として注目を集めています。

IP無線機は、携帯電話網を利用することで広範囲な通信を実現しましたが、実際の現場では新たな課題が見えてきました。例えば、病院の検査室や地下駐車場など、携帯電話の電波が届きにくい場所では通信が不安定になります。また、災害時など回線が混雑する状況では、緊急の連絡が届かないリスクもあります。さらに、利用台数に応じて通信料が発生するため、大規模施設での運用には大きなコストがかかります

一方、Wi-Fiネットワークやデータ通信を活用したインカムアプリには、従来のトランシーバーにはない重要な利点があります。例えば、施設内のWi-Fiアクセスポイントを適切に配置することで、地下フロアから上層階まで、建物構造に左右されない安定した通信品質を確保できます。従来のトランシーバーでは課題となっていた防火扉やエレベーターホール付近でも、途切れることのない通信が期待できます。

また、このシステムは単なる通話機能以上の可能性を秘めています。ナースコールとの連携により、誰がどの呼び出しに対応するのかをリアルタイムで共有できる機能や、音声が適さない状況でのテキストメッセージの活用など、現場のニーズに応じた柔軟なコミュニケーションが可能です。

ただし、導入を検討する際は、既存のWi-Fi環境の確認が重要なポイントとなります。多くの医療・介護施設ではすでに業務用のWi-Fiネットワークが整備されているため、このインフラを活用することで、新たな通信コストを抑えながら、高品質なコミュニケーション環境を構築できる可能性があります。

このように、最新のコミュニケーションツールは、従来型トランシーバーの物理的な距離制限を超えるだけでなく、現場の業務効率化や安全性の向上にも貢献しています。特に医療・介護現場では、確実な情報伝達が人命に関わる重要な要素となるため、より信頼性の高いコミュニケーション手段の選択が求められているのです。

まとめ

トランシーバーの通信距離は、機種によって500mから5kmまでと幅広く選択できます。しかし、医療・介護施設の実際の現場では、建物構造や医療機器との干渉により、カタログ性能を発揮できないことが多いのが現状です。アンテナの改良や中継器の設置といった従来の対策では、一時的な改善は可能でも、本質的な解決には至りません。

このような課題を解決するため、当社では施設のWi-Fiネットワークを活用したインカムアプリ「フィールドボイスインカム」を提供しています。距離の制限を受けない安定した通信に加え、テキストでの情報共有や通信履歴の保存、ナースコールなど外部システムとの連携も実現。すでに500施設以上での導入実績があり、解約率1%未満という高い継続率を誇っています。施設の業務効率化と安全性向上にお役立てください。

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